先天性の結合織疾患は多数あり、かつては臨床症状による分類が行われてきましたが、近年急速にコラーゲンやエラスチン、その他結合織に関連する遺伝子が同定されてきて、分類方法も変わってきているものもあるようです。
あまり詳細な遺伝子異常を羅列しても煩雑すぎるので、臨床像を主に調べてみました。
🔷骨形成不全症
主にI型コラーゲンを形成する遺伝子の異常により、易骨折性、四肢の変形、成長障害を主徴とする疾患です。皮膚、関節の過伸展があり、皮膚の菲薄化、創傷治癒遅延がみられます。また眼、歯、心臓の異常もみられます。
🔷Ehlers-Danlos症候群
関節の過可動、皮膚の過伸長、組織脆弱性を主徴とする先天性結合織疾患で、上記以外のコラーゲン遺伝子異常、コラーゲン修飾酵素の異常など多くの関連遺伝子変異によって生じます。多くは常染色体顕性遺伝形式をとります。遺伝子異常の解明により、分類は古典的なものから新分類に切り替わってきています。10型以上に分けられますが、頻度は古典型、関節型が9割を占めるとされます。
皮膚は一見正常ですが、触れると柔らかく、皮膚をつかむとよく伸びますが離すとすぐ元に戻ります。簡単な外力によって皮膚が裂けるので、傷つきやすい肘、膝、脛骨部などでは表面がシガレットペーパー様の萎縮性瘢痕を形成し易くなります。関節は過伸展がみられ、脱臼や側弯がみられやすくなります。その他心血管系、内臓の異常をみることもあります。
*古典型・・・重症型、軽症型に分けられる。Ⅴ型、Ⅰ型コラーゲンの異常による。
*関節型・・・関節過可動が主。脱臼を起こしやすい。本型が最も多い。
*血管型・・・Ⅲ型コラーゲンの異常による。最重症型。薄いい皮膚と透見できる血管。易出血性、動脈、血管の破綻など。
*後側弯型・・・関節弛緩、進行性側弯、強膜脆弱など。
*多発性関節弛緩型・・・先天性両側股関節脱臼など。
*皮膚脆弱型・・・高度の皮膚の脆弱性とタルミ
*その他の型・・・歯根膜炎型、X-linked formなど



🔷皮膚弛緩症
弾力線維に異常をきたして、皮膚が弛緩して、大きな皺を作って垂れ下がる。先天性ではエラスチン遺伝子、稀にフィブリン遺伝子の変異によって生じますが、後天性に生じる場合もあります。SLE,サルコイドーシス、多発性骨髄腫、アミロイドーシスに随伴して。またペニシリン、イソニアシドなどの薬剤性に伴って。
🔷弾性線維性仮性黄色腫(Pseudexanthoma Elasticum: PXE)
弾性線維の変性により皮膚、眼、心血管病変をきたす常染色体潜性遺伝性の疾患です。
病因はATP binding casette subfamily C member 6: ABCC6(MRP6) 遺伝子の異常によります。これは輸送膜たんぱく質をコードしており、その機能異常が弾性線維の変性や石灰化を引き起こすとされます。
症状は思春期以降に目立ってきます。側頸部、腋窩、関節屈曲部などに黄色調をおびた粟粒大丘疹が多発集簇して敷石状の局面を形成します。皮膚は柔らかくたるみ年と共に皺が目立ってきます。変性した弾性線維が排出されることによってざ瘡様の丘疹や蛇行性穿孔性弾性線維症を生じることもあります。
網膜と脈絡膜との間に存在するBruch膜は弾性線維に富んでおり、その変性と石灰化によって網膜血管線条を生じ、進行すると網膜剥離や失明を起こすこともあります。また動脈の弾性板も侵され、間欠性跛行、高血圧、内臓出血、心筋梗塞などを起こすこともあります。
皮膚では整容的な観点からの手術、眼、心血管系への予防的な対応が必要です。
🔷Marfan症候群
先天性に骨、眼、心血管系異常を呈する疾患で、常染色体顕性遺伝形式をとります。主にfibrillin-1遺伝子(FBN-1)の異常によります。
胸部、大腿などに伸展性の皮膚線条を生じ、異常な弾性線維が排出されるためにしばしば蛇行性穿孔性弾力線維症を認めます。外見上では長頭症、眼球陥凹、下顎後退を認め、高身長で下半身が異常に長く、手指も長く、クモ状指と形容されます。また漏斗胸や鳩胸、脊椎変形、関節の過伸展や脱臼を認めます。心血管の弾力性が低下するために大動脈弁閉鎖不全や解離性大動脈瘤をきたし易く致死的となり得ます。肺嚢胞は必発です。また眼では近視、水晶体偏移、青色強膜を認めます。
「あたらしい皮膚科学」に次のような記事がありました。
リンカーンとMarfan症候群
アメリカ合衆国第16代大統領であるリンカーン(Abraham Lincoln)は高身長で手指が長く、漏斗胸であったことからMarfan症候群に罹患していたのではないかという説が存在する。

参考文献
皮膚科学 第11版 編集 大塚藤男 藤本 学 原著 上野賢一 金芳堂 京都 2022
大塚藤男 19章 皮膚形成異常・萎縮症 2 遺伝性結合織疾患 pp490-496
標準皮膚科学 第12版 編集 石河 晃・奥山隆平・阿部理一郎 医学書院 東京 2025
澤田雄宇 第20章 真皮の疾患と肉芽腫症 C 先天性結合織疾患 pp320-322
あたらしい皮膚科学 第3版 清水 宏 著 中山書店 東京 2018