乾癬治療は今(1)

 先日、久しぶりに日本乾癬学会に出席してきました。
乾癬の治療は近年目覚ましい進歩を遂げ、次々と上市される新薬にはもうついていけない感じがあります。
ここに乾癬治療について書くのも講演の聞きかじりにも似て、躊躇するほどです。
そうはいっても、かつては乾癬を主研究課題としていた小生としては、過去との隔世の感を抱きつつ、最近の病態の解明や治療の進歩の速さに戸惑いながらも時代遅れにならないようにと、講演会などに出席して知識をアップデートしている状態です。
それで、講演記録を接ぎ合わせながら、乾癬治療の現況を調べてみました。

 乾癬の治療は長らくステロイド外用剤がその中心でした。光線療法(PUVA,narrow band UVB)も長い歴史があり、現在も治療手段の一端を担っています。種々の内服療法がありますが、治療の一大革命を起こしたのは何といっても2010年の生物学的製剤の登場でしょう。
過去からの乾癬治療の歴史を経年的に辿ると、以下のようでしょうか。

1950年代 ステロイド外用
1970年代 PUVA療法、MTX内服(海外)
1985年 エトレチネート(チガソン)
1992年 免疫抑制薬 シクロスポリン
1990年代 ビタミンD3外用剤 1993年 タカルシトール(ボンアルファ)、 2000年カルシポトリオール(ドボネックス)
2000年代 ナローバンドUVB(NB-UVB)、UVA1、ターゲット型光線療法、エキシマライト、レーザー
2010年 生物学的製剤の登場 TNF-α阻害薬 インフリキシマブ(レミケード)、アダリムマブ(ヒュミラ)
2011年 IL-12/23阻害薬 ウステキヌマブ(ステラーラ)
2014年 ビタミンD3・ステロイド混合外用剤 ドボベット マーデュオックス(2016年)
2015年 IL-17A阻害薬 セクキヌマブ(コセンティクス)
2016年 IL-17A阻害薬 イキセキズマブ(トルツ)、IL-17A受容体A ブロダルマブ(ルミセフ)
2017年 PDE4阻害薬 アプレミラスト(オテズラ)、インフリキシマブBS
2018年 IL-23p19阻害薬 PASI90~100の時代へ グセルクマブ(トレムフィア)
2019年 MTX(リウマトレックス)公知申請が承認、保険適用へ IL-23p19阻害薬 リサンキズマブ(スキリージ)
TNF-α阻害薬 セルトリズマブペゴル(シムジア)
2020年 IL-23p19阻害薬 チルドラキズマブ(イルミア)
2021年 JAK1阻害薬 ウパダシチニブ(リンヴォック)関節症性乾癬、ヒュミラBS
2022年 TYK2阻害薬 デュークラバシチニブ(ソーティクツ)、 IL-17A/F阻害薬 ビメキズマブ(ビンゼレックス) IL-36阻害薬(スペソリマブ)膿疱性乾癬
2024年 ウステキヌマブBS TAMA, タピナロフ(ブイタマークリーム)

乾癬という単一疾患にこれ程までに多くの薬剤、治療法が必要なのか、と一寸疑問に思ってしまいますが、翻って考えると乾癬という疾患が単なる皮膚表面の疾患ではなく全身性の疾患という側面をもつこと、最近の素晴らしい病態の解明の成果にも関わらず、まだ分からないことが多くあることの証左なのかもしれません。

次回はこれ程の多くの薬剤がどのように使い分けされているのか、また使い分けされるべきなのかを専門家の意見を聞きながら、個人的な感想も交えて述べてみたいと思います。