穿孔性皮膚症

 多くの皮膚疾患で時として、変性した皮膚成分が表皮を経由して排出される(transepithelial elimination:TEE)現象がみられます。成分としては、炎症細胞、赤血球、微小異物、ムチンや変性した膠原線維成分など様々なものが含まれます。TEEは環状肉芽腫や弾性線維性仮性黄色腫などの二次性の現象としてもみられますが、一次的にTEEをきたす疾患としては排出される成分や部位の違いによって大きく4つの疾患に分類されます。排出される成分は大きく膠原線維、弾性線維、角質成分に分けられます。
 歴史的には1916年にKyrleがKyrle病を報告しました。
1953年にはLutzが蛇行性穿孔性弾性線維症を報告しました。
1968年にはMehreganらが穿孔性毛包炎と後天性反応性穿孔性膠原線維症を報告しました。
1989年にはRapiniらは上記疾患がいずれもTEEを特徴としていることから、これらを総称して後天性穿孔性皮膚症(acquired perforating dermatosis)と呼称することを提唱しました。
現在では、必ずしも後天性とはいえない若年発症例もあることから後天性をはずして、穿孔性皮膚症と呼称されます。これら4種類のなかで、後天性反応性穿孔性膠原線維症が最も多くみられます。
🔷後天性反応性穿孔性膠原線維症
中心臍窩を有する角化性小丘疹や結節が外傷を受けやすい四肢伸側、躯幹などに多発します。糖尿病や腎不全、特に透析患者に多くみられます。他に悪性リンパ腫、肝硬変、甲状腺疾患、AIDSなどにもみられます。強い痒みに対し掻破することによる外傷が誘因になっている可能性が指摘されています。
1994年Faverらは診断基準として3項目をあげました。それ以降、これが診断基準とされています。
1)病理所見としてカップ状の表皮陥凹の中に膠原線維の排出像
2)臨床像は、中央に角栓が付着した中心臍窩を有する多発性の角化性丘疹または結節
3)18歳を過ぎてからの発症
固着性物質はしばしば漆喰状と記載されます。痒みがあり、ときに激しく、ケブネル現象を認めます。
🔷キルレ病Kyrle disease)
真皮貫通性毛包性毛包周囲性角質増殖症
四肢伸側、臀部、時に体幹に径数㎜、中央に角栓を有する紅色、褐色から黒褐色の丘疹が多発して、時に融合して疣状局面を形成します。周囲に紅暈あるいは色素沈着を伴います。角栓を取り除くと陥凹があり、後に瘢痕化します。ケブネル現象が陽性です。糖尿病、腎不全、透析患者にみられることがあります。毛包に異常角化細胞がみられ、変性した角質を経皮的に排出することにより生じるとされます。病理組織像では錯角化を伴う円錐状の角栓を認めます。ケラチン物質の経皮排泄(TEE)が特徴であり、膠原線維や弾性線維は含まれておらず、穿孔性毛包炎と鑑別されます。
ただ、他の穿孔性皮膚症との類似点も多く、キルレ病は反応性穿孔性膠原線維症の1型に過ぎないという見方もあります。
🔷穿孔性毛包炎
角栓を有する毛包一致性丘疹が四肢、臀部に多発します。病理組織学的には、開大した毛包漏斗部が壊死性物質と角化物、変性した炎症細胞で満たされています。毛包漏斗部が穿孔し、膠原線維や弾性線維が侵入する経皮排泄像(TEE)がみられます。糖尿病や慢性腎疾患患者や分子標的薬(キナーゼ阻害薬)での発症の報告がみられます。(マルチキナーゼ阻害薬であるソラフェニブやチロシンキナーゼ阻害薬であるニロチニブなど。またインフリキシマブ、ベムラフェニブでの報告例もみられます)。キルレ病との近縁性が指摘されています。
🔷蛇行性穿孔性弾性線維症
頸部や四肢、体幹上部に好発します。皮疹は角化性小丘疹が弧状、蛇行性ないし環状に配列して局面を形成し中央皮膚は萎縮性となります。病理組織像では肥厚した表皮内に嚢腫構造があり、中に変性弾性線維、壊死物質を含みこれらのTEEがみられます。
Marfaan症候群やEhlers-Danlos症候群、骨形成不全症などの結合織に異常を有する疾患に伴うもの、Down症候群などの遺伝的背景に伴うもの、D-ぺニシラミンに誘発される薬剤性のものの3型に分けられます。
【治療】
保存的な治療になります。
糖尿病や腎疾患に伴うものでは原病の治療や痒みのコントロールにより、軽減した報告はあります。薬剤性の場合は、現認薬剤の中止を考慮します。
外用療法としてステロイド剤やビタミンD3製剤、冷凍凝固や全身療法としてレーザー照射なども試みられています。
痒みに対して抗ヒスタミン剤の効果は期待できず、レミッチなどが試みられていますが難治です。
生物学的製剤のネモリズマブが有効であった報告もあり今後の検討が待たれます。

参考文献

皮膚科学 第11版 編集 大塚藤男 藤本 学 原著 上野賢一 金芳堂 京都 2022
大塚藤男 19章 皮膚形成異常・萎縮症 [5] 穿孔皮膚症 pp504-506

標準皮膚科学 第12版 編集 石河 晃・奥山隆平・阿部理一郎 医学書院 東京 2025
澤田雄宇 第20章 真皮の疾患と肉芽腫症 D 穿孔性皮膚症 pp322-324

皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2024
神戸直智 IX 肉芽腫、真皮の変性疾患 5.穿孔性皮膚症 pp132

日本皮膚科学会ガイドライン
穿孔性皮膚症(perforating dermatosis)の診療の手引き 
川上民裕 ほか 日皮会誌: 130(9),2007-2016,2020(令和2)

皮膚病理組織診断学入門 改訂第3版 斎田俊明 著 南江堂 
Elastosis perforans serpiginosa 蛇行性穿孔性弾性線維症 pp90