サルコイドーシス

【概念】
原因不明の全身性肉芽腫性疾患で、皮膚、リンパ節、肺、肝、脾、心筋、中枢神経、腎、口腔粘膜、眼、骨、耳下腺など全身の諸臓器を侵します。肉芽腫が集合して形成された結節をサルコイド(類肉腫)といい、皮膚ならば皮膚サルコイド、全身性ならばサルコイドーシスと呼びますが、慣用的に皮膚でも皮膚サルコイドーシスと呼称します。
【病因】
不明ですが、遺伝素因(特定のHLA遺伝子、疾患感受性遺伝子)のある者に病因抗原が作用してTh1型の細胞性免疫(Ⅳ型アレルギー)が惹起され全身臓器に肉芽腫が形成されると考えられています。病因抗原としてはアクネ菌(Cutibacterium acnes)や結核菌が想定されています。
【疫学】
日本の有病率は人口10万人対1.7人。20歳代、50歳代以降にニ峰性のピークを示し女性にやや多いです。寒冷地に多い傾向があり、北海道での発生率は高めです。
臓器別では、肺門リンパ節75.8%、眼病変54.8%、肺病変46.7%、皮膚病変35.4%です。
【皮膚の臨床症状】
皮膚病変は1/3の症例で出現
分類(山本 提唱;瘢痕型も特異疹に含める)
1)特異疹・・・組織学的に肉芽腫を認めるもの
・結節型・・・浸潤のある紅色から褐色の丘疹、結節で鱗屑を伴うことが多い。最も頻度が高い。
・局面型・・・遠心性に拡大する環状の皮疹で中央部はやや萎縮し、辺縁は堤防状に隆起する。頭部、顔面に多い。
・びまん浸潤型・・・暗紅色のびまん性に腫脹する凍瘡様皮疹(lupus pernio)で、指趾、頬部、耳介などに好発する。日本では稀。
・皮下型・・・四肢、臀部に好発する。米粒大から巨大腫瘤まで大小様々。
・瘢痕(浸潤)型・・・陳旧性の瘢痕部位に生じる。膝蓋、肘頭、顔面など外傷を受けやすい部位に好発する。他科からの依頼での生検で診断に有用。
・その他・・・苔癬様型(アミロイド苔癬に似る)、結節性紅斑様皮疹、魚鱗癬様型、乾癬様皮疹、潰瘍型など多彩
2)非特異疹・・・組織学的に肉芽腫を認めないもの
結節性紅斑、通常のものと臨床・組織所見は変わらない。頻度は欧米では数10%とされるが、日本人では数%と少ない。
全身性サルコイドーシス(systemic sarcoidosis:SS) と皮膚サルコイドーシス(cutaneous sarcoidosis:CS)の生検組織の比較検討。
CSではTH1>TH2, M1>M2、SSではTH1<TH2, M1<M2 の結果より M2マクロファージの浸潤が病勢を反映し、SSでは患者の免疫力が抗原の全身性播種を阻止できていないと考えらえる。(浅井)
また末梢血中のCD163はサルコイドーシスの活動性の指標となりうる。(Tanimura)
【アクネ菌の関連】
アクネ菌(にきび菌) 従来は Propionibacterium acnesとされていたが近年では Cutibacterium acnesと呼称される。
亜型
IA1: 炎症性皮膚疾患(ニキビ)と関連性が高い。病原性が強い。 悪玉アクネ菌
IA2,IB,IC: 中間的な病原性。特定の病態との関連はまだ不明確。
II,III: 非炎症性、健常皮膚に多くみられる。病原性は低い。  善玉アクネ菌
欧米では結核菌原因説が主流だったが、日本ではリンパ節からのアクネ菌の分離培養に成功し、他疾患より有意に高かったという報告あり(Abe et al,1984)。しかし海外からはコンタミ説を疑われる。
発症には病原体、宿主要因(遺伝的感受性)、環境要因が関与するらしい。
細胞内で消化処理困難な原因物質に対し、抗原性が乏しい場合には異物肉芽腫を形成し、強い抗原性を持つ場合はサルコイドーシスなどの類上皮細胞肉芽腫を形成する。(病理学的原則)。
PAB抗体:アクネ菌の細胞膜結合性リポテイコ酸。肺サルコイドーシスの肉芽腫においてPAB染色陽性像を高頻度に認める。(TBLB経気管支的肺生検:48%、 VATSビデオガイド下胸腔鏡手術:74%陽性)
その他リンパ節、心臓、脳神経、脾臓、骨格筋、皮膚でのサルコイドーシス肉芽腫でのPAB抗体陽性率は80~100%と高い。
江石らによるサルコイドーシスのアクネ菌病因説
・外部からの初感染により経気道的にアクネ菌の不顕性感染
・肺及び肺門リンパ節と通り、潜伏感染し内因性活性化して細胞内増殖
・アレルギー反応により肉芽腫を形成(high responder)
・リンパ行性、血行性に全身に拡散すればSSとなる。皮膚のみならばCSとなる。
【病理】
1)類上皮細胞(上皮様組織球)によって構成される200-300μm大の境界明瞭な非乾酪性肉芽腫が孤立性に、あるいは融合してみられる。
2)肉芽腫には類上皮細胞のほかにリンパ球やラングハンス型巨細胞、異物型巨細胞が含まれる。
3)巨細胞内にしばしばアステロイド小体(星芒状小体)が認められる。シャウマン体(カルシウム沈着あり)、硝子様封入体を見ることもある。
4)融合する肉芽腫ではときに好酸性の凝固壊死が認められる。
【肉芽腫性血管炎】
血管壁破壊を伴うサルコイド血管炎の頻度は低く報告も少ないが、実は病理で見逃されているケースも多い。小動脈よりも小静脈の方が侵され易い。HEのみではなくエラスチカ・ワンギーソン染色で子細に観察すると血管近傍から内腔にまで肉芽腫が浸食している肉芽腫性血管炎の所見もかなり認める。さらに血管の長軸方向の所見は見ると分かり易い(1枚の切片で異なる時期の病理像からEGPAの診断がつけられることもある)。(陳)
【他臓器病変】
1)肺:BHL(Bilateral Hilar Lymphadenopathy)、びまん性の肺野陰影、粒状影、斑状影、進行すると肺線維症
2)眼:肉芽腫性ぶどう膜炎、充血、霧視、羞明、飛蚊症、視力低下をきたす
3)心臓:完全房室ブロック、心室性不整脈、心不全、時に突然死。サルコイドーシスの死因の半数以上は心病変による
4)その他:骨嚢腫、肝機能障害、顔面神経麻痺、鼻閉など
【検査所見】
血清ACE(angiotensin converting enzyme)活性、リゾチーム、可溶性IL-2受容体、血清Ca、γグロブリン値などの上昇、
BALF(気管支肺胞洗浄液)でT細胞の増加・CD4/8比の上昇
【診断】
サルコイドーシスの診断基準は、
A.臨床症状・・・全身諸臓器の症状(呼吸器、眼、皮膚、心臓、神経を主とする)
B.特徴的検査所見・・・BHL.ACE,sIL-2R,Gaシンチ、BALT CD4/CD8↑
C.臓器病変を強く示唆する臨床所見・・・呼吸器、眼、心臓
D.鑑別診断
E.病理学的所見
A.~E.の所見の組み合わせにより、<診断カテゴリー>が定められており、D.が除外された上で、大きく組織診断群と臨床診断群に分類されます。
皮膚科医のサルコイドーシスに対する役目としては、当然のことながら皮膚所見を臨床的、病理学的に正しく見極めること、またD.のサルコイドーシスに類似した鑑別診断にも留意することです。鑑別を要する他の皮膚肉芽腫は多数存在します。
さらに、皮膚科は生検組織が取り易いために、他科から臨床、組織診断を求められるケースが多く、疑わしい皮疹に対しては積極的に生検を行い、診断に協力すべきです。特に肘、膝の微小な瘢痕様皮疹からの組織診断は診断価値が高いとされています。
【皮膚科での鑑別診断】
他の皮膚肉芽腫:環状肉芽腫、リポイド類壊死、Melkersson-Rosenthal症候群、バザン硬結性紅斑、肉芽腫性口唇炎、肉芽腫性眼瞼炎、顔面播種状粟粒性狼瘡、酒さ、Blau症候群
皮膚科関連の疾患:悪性リンパ腫、癌、ベーチェット病、アミロイドーシス、多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、IgG4関連疾患、結核、肉芽腫を伴う感染症(非結核性抗酸菌感染症、真菌症)など多くの鑑別を要する疾患があります。
【重症度分類】
1.臓器病変数(スコア1,2) 2.治療の必要性(スコア0,1,2) 3.身体障害1級~4級(スコア0,1,2)
上記のスコアを合計して重症度を判定する。
合計スコア 1   重症度 I
合計スコア 2   重症度 II
合計スコア 3,4 重症度 III
合計スコア 5,6 重症度 IV
重症度IIIとIVを指定難病の公費対象とする。
【治療】
根治療法はなく対症療法となります。
1)全身療法
肉芽腫性炎症を抑制する目的で免疫抑制療法が行われます。病状の軽重、経過は様々であり、治療介入の有用性、利益不利益を勘案しつつ、各科協力して治療介入することが重要です。第一選択薬はステロイドですが、難治例、再発例も多く、2次治療薬としてメトトレキサートやアザチオプリンなどの免疫抑制剤も使用されています。
2)局所療法
局所療法は眼病変、皮膚病変に対して行われ、時には呼吸器病変に対しても行われています。
皮膚病変に対しては、ステロイドやタクロリムスの外用、ステロイドの局注が行われていますが、効果は限定的であり、自然軽快もあることから経過観察のみの場合もあります。

参考文献

皮膚科学 第11版 編集 大塚藤男 藤本 学 原著 上野賢一 金芳堂 京都 2022年
梅林芳弘 20章 肉芽腫症・皮下脂肪織の疾患 サルコイドーシス pp509-515

今日の皮膚疾患治療指針 第5版 編集 佐藤伸一 藤本 学 門野岳史 椛島健治
井川 健 17 非感染性肉芽腫症、脂肪織炎 サルコイドーシス pp611-616

皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2024
猪爪隆史 IX 肉芽腫、真皮の変性疾患 1.サルコイドーシス pp127-128

第124回日本皮膚科学会総会 2025年5月29日~6月1日(パシフィコ横浜)
教育講演24 
肉芽腫性疾患に強くなろう!

EL-24-1 浅井 純 サルコイドーシスの皮膚病変

EL-24-2 三浦圭子 皮膚サルコイドーシスにおけるPAB抗体の局在と診断への応用

EL-24-3 山本俊幸 サルコイドーシス以外の肉芽腫性疾患

EL-24-4 陳 科榮 サルコイドーシスおよびその他の肉芽腫症における肉芽腫性血管炎