皮膚萎縮症

 🔷線状皮膚萎縮症、伸展性皮膚線条(striae distensae)
幅数㎜、長さは10数㎝に及ぶ、ほぼ平行に走る皮膚面よりわずかに陥凹した萎縮性線状が多発します。初期には淡紅色、のちには灰白色となります。腋窩、腹部、乳房部、大腿部、臀部、膝窩部などに好発します。皮膚の伸展方向と直角に走行し、皮膚割線に沿います。俗にいう「肉割れ」。
 肥満、成長、妊娠、Cushing症候群などによる皮膚の機械的伸展が主な発生機序です。グルココルチコイドの過形成(線維芽細胞の増殖抑制、膠原線維産生抑制)、ステロイド内外用の長期問投与、糖尿病なども関与します。
 妊娠性線条は妊娠6カ月頃より生じ、妊婦の約90%に生じます。成長期、思春期女子の70%、男子の40%近くにみられます(思春期線条)。
 特別な治療方法はなく、自然に目立たなくなるのを待つことになります。レーザー治療やレチノイド外用などの報告はありますが、効果は限定的と思われます。
🔷老人性皮膚萎縮症
高齢者に見られます。表皮、真皮共に老化現象によって皮膚が萎縮します。表皮が萎縮することによって、皮膚表面が平滑で細かい皺を伴ったり、真皮が萎縮することによって菲薄化し、皮下脂肪の消失と共に弾性を失い、乾燥、粃糠様落屑を生じ、大小の皺が目立つようになってきます。色素沈着、色素脱失、毛細血管拡張なども加わり、しなびた老人の肌となります。発汗、皮脂分泌能、水分保持能も低下します。軽微な外力によって皮膚が裂ける皮膚裂傷(スキンテア)や皮下出血なども生じやすくなります。
 光老化は紫外線をはじめとした太陽光線の長年の影響によって皮膚露光部に生じます。水夫皮膚、農夫皮膚と呼ばれ顔面、項部、前腕などに見られます。シミ、皺、色素沈着、落屑はより顕著になります。項部では深い皺が斜交して菱形皮野を形成し項部菱形皮膚を生じます。光線性弾性線維症では変性弾性線維が増加して、額、眼瞼周囲、頬部などに顕著になると大小の黄白色丘疹が多発して、その中に面皰様黒色小点を有する場合があり、Favre et Racouchot syndromeと呼ばれることもあります。
また光老化皮膚は日光角化症、有棘細胞癌などの発症素地ともなります。
🔷硬化性萎縮性苔癬
外陰部に2-3㎜の白色扁平丘疹が集簇して、固い白色局面を形成します。のちに萎縮して羊皮状となります。毛孔性角栓が特徴的です。萎縮が高度になると陰唇の縮小、膣口、尿道口の狭窄をきたします。外陰部から肛門周囲にかけて「8の字型」の分布を示すこともあります。中高年女性に好発しますが、男性陰茎や小児にもみることがあります。原因は不明ですが、遺伝的素因や、性ホルモンとの関連、自己免疫機序などが考えられています。限局性強皮症の亜型という説もあります。
数%ながら有棘細胞癌の発生があります。
🔷多形皮膚萎縮症(ポイキロデルマ:poikiloderma9
独立した疾患ではなく、色素沈着、色素脱失、皮膚萎縮、毛細血管拡張など多彩な症状が混在する状態を指します。
先天性、後天性にも生じます。
先天性
・骨髄性ポルフィリン症
・骨髄性プロトポルフィリン症
・色素性乾皮症
・Cockayne症候群
・Bloom症候群
・Rothmund-Thomson症候群(先天性多形萎縮症)
・先天性角化異常症(Cole-Engman症候群)
・focal dermal hypoplasia(Goltz症候群)
(いずれも稀少疾患ですが、一部については過去にブログにアップしました。)
後天性
・菌状息肉症
・皮膚筋炎
・全身性エリテマトーデス(SLE)
・晩発性皮膚ポルフィリン症
・薬剤性光線過敏症
・慢性放射線皮膚炎
この中で特に日常診療において遭遇する注意を要すべき疾患は菌状息肉症と膠原病(特に皮膚筋炎)です。

上記以外にも、皮膚萎縮をきたす疾患は多くありますが、頻度は高くないものなので簡単に列記します。
🔷斑状皮膚萎縮症
真皮の弾性線維が消失して皮膚が限局性に弛緩し、ヘルニア様、袋状に突出するもの。原因不明。30~40台の女性にみられ、躯幹、四肢近位側に発生します。
🔷パッシーニ・ピエリーニ型進行性特発性皮膚萎縮症
大小の円形、楕円形の紫褐色調で陥凹性の皮膚萎縮斑が不規則にあるいは列序性に発生し徐々に拡大します。若い女性に多いとされます。限局性強皮症の非典型例とする考えもあります。
🔷顔面片側萎縮症(Parry-Romberg症候群)
小児・若年者にみられます。三叉神経領域にみられ、しばしば皮下脂肪、筋肉、骨も萎縮します。稀に体幹部にも波及します。剣創状強皮症を合併することが多く限局性強皮症の一型とする考えもあります。

参考文献

皮膚科学 第11版 編集 大塚藤男 藤本 学 原著 上野賢一 金芳堂 2022 東京
大塚藤男 19章 1 皮膚萎縮症 pp483-490

あたらしい皮膚科学 第3版 清水 宏 著 中山書店 2018 東京
18章 真皮、皮下脂肪組織の疾患 pp337-359