伝染性単核球症(infectious mononucleosis:IM)はEBウイルス(EBV:HHV-4)感染症です。主に思春期にEBウイルスに初感染して発症します。日本では幼児期までに90%前後の人が不顕性感染するために、学童期から成人に発症します。既感染者では口腔内の唾液中にEBウイルスを常に排出するために接触により容易に感染します。小児では母親から、思春期以降は異性から感染することが多いので、海外ではkissing diseaseとも呼ばれます。幼児期までの感染では、軽い風邪症状程度で済んでしまいますので、ほとんどの人が無自覚です。
時にGianotti-Crosti症候群や、ごく稀にEBV関連疾患(NK/Tリンパ腫、種痘様水疱症、重症蚊刺アレルギー)を起こしますが、大部分の人は無症状です。
EBVは口腔や咽頭粘膜のB細胞に感染して全身に広がり、これを排除するためにNK細胞やCD8陽性T細胞が増殖します。細胞性免疫が発達する思春期以降はIMを発症する確率が高くなってきます。
【症状】
4~6週間の潜伏期間の後、頭痛や全身倦怠感などの前駆症状を伴い、発熱、扁桃炎、リンパ節腫脹(特に後頚部リンパ節)を生じます。これがIMの古典的三主徴と呼ばれています。38度以上の高熱は1、2週間程度続くこともあります。皮疹の発生率は10〜50%とされ、第4〜10病日に出現します。皮疹は風疹様、麻疹様、猩紅熱様、蕁麻疹様、多形紅斑様など多彩な形態をとります。約半数に両側眼瞼浮腫(Hoagland sign)を生じます。扁桃炎などに対し、アンピシリンなどペニシリン系の抗生剤が投与されると過敏反応を起こし、内服7~10日後に高率にアンピシリン疹を生じます。肝脾腫を来たし肝機能異常も伴います。極稀に脾臓の破裂を来たすことがあるために、1ヶ月程度は重労働、激しいスポーツなどは避けて腹部の圧迫がかからないようにすることが必要です。合併症には、血小板減少症、溶血性貧血、髄膜炎、脳炎、ギラン・バレー症候群などがあります。
【診断と検査】
白血球数は増加し、異型リンパ球と呼ばれる大型の細胞が多数出現します。これはEBVに感染したB細胞ではなく、感染細胞を排除すべく活性化したCD8+T細胞です。従ってCD4/CD8比は低下します。AST,ALT,LDHの上昇を認めます。また感染B細胞が産生するポリクローナルなγ-glの上昇を認めます。EBV関連の抗体は3種類あります。すなわち、VCA(virus capsid antigen)抗体、EA(early antigen)抗体、EBNA(EBV nuclear antigen)抗体です。VCA IgM抗体、EA IgM抗体は感染早期から上昇しますが、抗EBNA抗体は感染後、6~12週後から上昇し、終生陽性となります。従って、診断は、①抗V CA-IgM抗体陽性、または②抗VCA-IgG抗体陽性かつ抗EBNA抗体陰性により診断を確定するのが一般的です。但し、中にはサイトメガロウイルス、トキソプラズマ、HIV、COVID-19よるIMも見られることがあるため、判断には慎重さを要します。
【治療】
EBVに対する特効的な治療はないため、対症的に治療を行い、自然治癒を待ちます。経口摂取が困難な場合は入院して補液を行います。皮疹の誘発、増悪を避けるためにペニシリン系の抗生剤投与は控えます。高度の肝障害、脾腫などがあれば、1ヶ月程度は激しいスポーツ、腹部の圧迫、重労働などは避ける様指導します。
参考文献
皮膚疾患 最新の治療 2023-2024 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2022
大谷稔男 10 伝染性単核症 XVI 感染症 B ウイルス pp214
皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2024
岸部麻里 10 伝染性単核球症 XVI 感染症 B ウイルス pp209
新しい皮膚科学 第3版 清水 宏 著 中山書店 東京 2018
23章 ウイルス感染症 7. 伝染性単核球症 pp507-509