ジベルバラ色粃糠疹(pityriasis rosea Gibert:PR)は10~30歳代の若年者にみられる炎症性角化症で、健康な人に突然発症し、1個の原発疹(ヘラルド疹)とそれに続く躯幹に多発する紅斑落屑性の皮疹を呈する疾患です。数週間内で自然治癒していきます。原因はヘルペスウイルス6,7(HSV6,HSV7)を主体としたウイルスの再活性化が想定されていますが、未だに明確ではありません。1860年にフランスのGibertが初めて同名で報告したためにこのように命名されました。
【病因】
・HSV-6,HSV7の再活性化
ウイルス感染が想定されている理由はいくつかあります。
患者皮疹部、血清中などにHSV-6,7のmRNA、DNA,蛋白が認められたこと、春、秋の季節変動がみられること、時に発症のクラスターがみられること、発症初期に発熱、吐気、倦怠感、関節痛などの風邪様症状をみることがあること、などです。
しかしながら逆にHHV-6,7の証拠がみられなかったとの報告もあります。
HSV-6,7は突発性発疹(小児バラ疹、第六病)の原因ウイルスとして知られています。米国では人口の90%以上が3-5歳までにこのウイルスに感染するとされています。このウイルスの再活性化のメカニズムについてはまだ不明なところが多く、PRの発症メカニズムについても未だ明確には解明されてはいません。
・近年は新型コロナウイルス感染の伴う例、また各種ワクチン投与後の発症の報告もあります。
・各種薬剤投与後にPR様の発疹を生じた報告があります。
ヒ素剤、バルビタール、ビスムス、カプトリル、クロニジン、金剤、IFN-α、Dぺニシラミン、スルファサラジン、メトロニダゾール、テルビナフィンなど多くの薬剤の報告がありますが、多くは非典型的な皮疹と経過を取ります。
【症状】
10~30歳代の若年者に好発します。女性の方がやや多いとされます。小児、高齢者の報告も稀にみられます。
直径2~5cm程度の初発疹(herald patch)は楕円形の辺縁に襟飾り状の鱗屑を有した紅斑で主に体幹に生じます。通常単発です。その後2日から1,2週間後に、より小型の楕円形の皮疹が主として躯幹に多発してきます。これを続発疹とよびます。個々の発疹は1~2cm大の大小不同の紅斑で辺縁に環状の鱗屑を付し、その長軸は皮膚の割線方向に一致します。背部ではその配列がクリスマスツリー状に見えます。一部では鱗屑のない紅色丘疹も混在してみられることもあります。痒みはないか、あっても僅かです。時に頭痛、発熱など風邪症状を伴うこともありますが、軽度です。
【診断と検査】
一般血液検査で特異的なものはなく、診断はもっぱら特徴的な臨床所見と、経過によります。病理組織所見も湿疹病変に類似したもので、非特異的です。
特徴的な初発疹、続発疹がみられれば診断は比較的容易ですが、やや非特異的な皮疹や経過をたどると、鑑別すべき種々の疾患があります。
薬疹、滴状乾癬、類乾癬、苔癬状粃糠疹、脂漏性皮膚炎、梅毒バラ疹、自家感作性皮膚炎、癜風、体部白癬などです。皮疹が四肢、特に手掌、足底にまで及ぶケースでは第2期梅毒をより疑います。症状が長期に及ぶ場合は乾癬、類乾癬なども疑い病理組織検査が必要になる場合もあります。
【治療】
ほとんどのケースで自然軽快し再発もほとんどないので、病気の経過説明をした上で自然経過観察、対症療法でも構いません。そう痒を伴う場合は抗ヒスタミン剤の内服、頭痛、発熱などにはカロナールなどの鎮痛解熱剤などを使用します。必須ではありませんが一般的にはステロイド外用薬が使用されます。皮疹が高度な場合はPUVA療法、ナローバンドUVB療法などが施行されることもありますが、治癒後の炎症後色素沈着を増強することもあり注意を要します。
参考文献
皮膚疾患 最新の治療 2023-2024 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2022
長谷川敏男 7 Gibertばら色粃糠疹 XⅢ 炎症性角化症 pp165
皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2024
杉浦一充 8 Gibertばら色粃糠疹 XII 炎症性角化症 pp162
Fitzpatrick`s Dermatology in General Medicine 7th ed. Klaus Wolff, Lowell A. Goldsmith, Stephan I.Katz, Barbara A.Gilchrest Amy S.Paller, David J.Leffell McGraw Hill 2008
Andrew Blauvelt Pityriasis Rosea Chapter 41 pp362-366
初発疹(herald patch)
続発疹
