Gianotti-Crosti症候群(Gianotti-Crostini syndrome: GCS)は、ウイルス、細菌、ワクチンなどに対する遅延型免疫反応として生じるとされる、臨床的に特徴的な小児の急性発疹症の一つです。
小児の頬部、四肢伸側、臀部などに対称性に出現する数mm程度の充実性丘疹が、四肢より上行性に拡大します。
1955年にGianottiによって最初に報告されました。1970年に同症の患者からHBs抗原が同定されたために、B型肝炎ウイルスが原因の場合をGianotti病と呼び、それ以外の原因の場合は、GCSと区別して呼ばれていました。しかし、その後の多くの症例の検討の結果、両者間には特別な差異はないことが分かり、近年では、一括してGCSと呼ばれています。
【病因】
主にウイルス感染に伴って出現します。1970年代は肝炎ウイルスによる報告例が多数を占めていましたが、近年は先進国を中心に肝炎ウイルス感染症も減少し、それに伴ってそれ由来の報告例も減少してきました。ちなみに本邦では、2016年10月からB型肝炎ワクチンが定期接種化されています。現在では、それにかわってEBウイルスが最も頻度が高いとされています。しかしながらその他多くのウイルスの報告があります。サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、コクサッキーウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトパルボウイルスB19その他多くのウイルス感染症の報告例があります。 最近では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってGCSを発症した症例報告もあります。
また溶連菌、マイコプラズマ、バルトネラ、ボレリア、抗酸菌などの細菌感染症の後に発症した報告例もあります。
さらに各種ワクチン接種後に発症の報告例もあります。(ジフテリア・破傷風・百日咳(DPT)、麻疹・ムンプス・風疹(MMR)、インフルエンザ、ポリオ、水痘、A型・B型肝炎、日本脳炎 など)
GCSの病態としてこれらウイルス、細菌、ワクチンに対する遅延型反応が考えられています。またアトピー性皮膚炎は発症のリスクファクターとされています。
EBウイルスに関しては、日本では幼児期までに90%前後の人が不顕性感染し終生免疫を持つものの、常に口腔内にウイルスを排出するため、容易に経口、経気道感染するとされます。思春期にEBウイルスに初感染すると伝染性単核球症を発症します。 (主に異性から経口感染するので俗にキス病(kissing disease)と呼ばれます。(発熱、リンパ節腫脹、血液検査異常(リンパ球増加、異型リンパ球出現)、肝脾腫など)。
なぜ小児期ではGCSを、思春期以降は伝染性単核球症を発症するのかについては、確証はありませんが成長による免疫反応の違いが影響すると考えられています。
【症状】
1~15歳に見られますが、1~3歳が主です。
数mm大の紅褐色丘疹が肘窩、膝窩を除く四肢伸側に対側性に播種状に多発して、臀部、頬部などにも上行性に拡大します。体幹はほぼ侵されません。個疹は充実性ですが、漿液性となり、顔面では融合傾向があります。2歳以下では、比較的大型の丘疹が見られることもあります。痒みは無いかあっても軽度です。発疹は約1ヶ月続いた後自然消退していきます。全身症状はあまり見られませんが、軽度の発熱や風邪症状、食欲不振、頸部などのリンパ節腫脹を認めることがあります。
【診断と検査】
診断は臨床症状、皮疹の経過などから臨床的に判断します。GCSに対する特異的な検査はありません。ウイルス感染症に伴う変化(白血球数、リンパ球数、血小板、CRPなど)がみられることがあります。肝酵素の異常がみられれば、必要に応じHBV,EBV、サイトメガロウイルスなどを中心に検査を進めていきます。
【治療】
他のウイルス感染症より経過は長いですが、3~8週間で自然に軽快しますので、経過観察でかまいません。症状がある場合はそれぞれの対症療法(痒みには抗ヒスタミン剤、ステロイド外用剤、発熱には鎮痛解熱剤など)を行います。但し、B型肝炎ウイルスが原因の場合は肝炎を発症する場合もありますので、その治療、経過観察を行います。稀にキャリア化することがあるので家族など患者周辺の人には適宜抗体検査、ワクチン接種などが推奨されます。

参考文献
皮膚疾患 最新の治療 2023-2024 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2022
山本剛伸 11 Gianotti病,Gianotti-Crosti症候群 XVI 感染症 [B]ウイルス pp215
皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2024
中島喜美子 11 Gianotti病,Gianotti-Crosti症候群 XV 感染症 [B]ウイルス pp210
皮膚科臨床アセット 3 ウイルス性皮膚疾患ハンドブック 総編集◎古江増隆 専門編集◎浅田秀夫 2011 東京 中山書店
寺木祐一 急性発疹症とウイルス 28 Gianotti-Crosti症候群 pp182~185