伝染性軟属腫は俗に「みずいぼ」と呼ばれる伝染性軟属腫ウイルス(ポックスウイルス科)によって感染する疾患です。小児や幼児に好発し、夏季に多くみられますが、年間を通しても発生します。皮膚と皮膚の接触やタオル、ビート板、浮き輪、日用品などを介した接触感染によって伝搬します。成人では稀ですが、HIV、リンパ腫、白血病、免疫抑制剤内服などによる免疫抑制状態で発症することもあります。あるいはアトピー性皮膚炎などで皮膚バリア障害がみられる場合にも発症することがあります。潜伏期間は2週間から50日ほどといわれています。
【症状】
典型的な皮疹は、直径が数mm程度で皮膚面からドーム状に隆起する丘疹、ないし小結節で、皮膚色から淡紅色、淡褐色を呈しており、表面に光沢があります。中心部が陥凹し、中心臍窩を認めることが多いです。通常自覚症状はありませんが、周囲に湿疹反応を伴い軽い痒みを呈することもあります。躯幹四肢を主体に全身どこにでも生じます。
【診断・鑑別診断】
典型的な臨床症状より、診断は比較的容易ですが、多発する場合は、尋常性疣贅(イボ)、青年性扁平疣贅、若年性黄色肉芽腫、光沢苔癬などと類似することもあります。単発では稗粒腫、疣贅、黄色肉芽腫、毛包炎などが鑑別に上がります。紛らわしい場合は、トラコーマ鑷子などで圧出すると”水いぼ”の場合は乳白色の粥状物質の排泄があるので確認することができます。診断に際し、特別な検査法はありませんが、皮膚病理検査を施行すれば、軟属腫小体とよばれる好酸性の封入体を確認することで確定診断できます。
【治療】
小児では数か月から1,2年内に自然治癒が期待できる疾患であるために、小児科など医師によっては経過観察でよい、とする意見も多くみられます。しかし、放置することによってより多発し、長期にわたり湿疹化したり、二次感染を併発したり、他の小児への感染を引き起こしたりする危険性もあり、早期に、少数のうちに摘除を行うことが望ましいとされます。
但し2018年に厚生労働省が「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」を公表し、「プールの水では感染しないので、プールに入っても構わない」とされました。従ってこのガイドラインに沿って治療対応を進めることが推奨されます。
すなわち、保護者が摘除を希望し、患児も嫌がるそぶりを見せない場合は、トラコーマ鑷子などを用いて摘除を行ないます。摘除約1時間前に貼付用局所麻酔薬であるペンレステープを適当な大きさに切って皮疹部に貼ります。通常1回に2枚までとされており、麻酔薬のアレルギー反応、中毒反応には注意する必要性があります。患児が嫌がるようであれば、経過観察か疼痛のないその他の方法を考慮します。潜伏期が長期間であるために、いったん治療しても、さらに再発することが多々あります。治療は1回のみではなく繰り返しになることはあらかじめ周知しておく必要があります。
鑷子による摘除以外では、凍結療法、レーザー療法なども試みられていますが、いずれも痛みを伴います。
その他では40%硝酸銀溶液・ペースト外用、スピール膏貼付、スピール膏貼付・ポピドンヨード外用併用、20%グルタルアルデヒド外用、10~20%グリコール酸外用、モノクロル酢酸外用、ポドフィリン外用、べセルナ外用、オキサロール軟膏外用、ヨクイニン内服などが試みられてはいるようですが、いずれも特効的とはいえません。
【生活上の注意】
プールの水では感染しない、とされますが、プールや水遊びでの感染の可能性については注意が必要です。皮膚に触れる器具類は共用しない、タオルなどは共用しない、皮膚同士の接触はさせない、またラッシュガード、包帯、耐水性絆創膏などで覆い、他の児童への感染を防ぐなどの対応策を講じることが必要です。
ウイルスは50度で活性がなくなるために衣服、リネン類は熱湯消毒すれば感染の拡大を防ぐことができます。
参考文献
皮膚疾患 最新の治療 2023-2024 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2022
海老原 全 5 伝染性軟属腫 XVI 感染症 [B]ウイルス pp209
皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2024
大磯直毅 5 伝染性軟属腫 XV 感染症 [B]ウイルス pp204
皮膚科臨床アセット 3 ウイルス性皮膚疾患ハンドブック 総編集◎古江増隆 専門編集◎浅田秀夫 2011 東京 中山書店
日野治子 VI その他のウイルス 42 伝染性軟属腫 pp276~281

ペンレスを適当な大きさに切って貼付
約1時間後摘除
モルスクム小体