手足口病

手足口病(hand-foot-mouth disease:HFMD)はエンテロウイルスによる感染症で、乳幼児に好発し、夏季に流行する感染症です。
病名のように手掌、足底、口腔粘膜に水疱性の発疹を生じます。一般的に軽症ですが、中には発熱など全身症状を伴い、髄膜炎などの中枢神経症状を呈するなど重症のケースもあり、看過できません。
数年ごとに流行の波があります。
【病因】
ピコルナウイルス科(RNAウイルス)に属するエンテロウイルスが原因です。血清型によりポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルスに分類されますが、HFMDを発症するのは主にコクサッキーウイルスA6,A10,A16型、エンテロウイルスE71型とされます。
【感染経路】
主に便中に排泄されたウイルスの手指を介する経口感染、時に咽頭から排出されるウイルスによる飛沫感染、水疱からの接触感染によります。上気道に侵入したウイルスは小腸で増殖し、血行性に皮膚、粘膜に運ばれ、再増殖します。
【疫学】
夏季に多く発症し、時には秋から冬まで続くこともあります。数年おきに流行があり、年ごとに異なるウイルス型が流行する傾向があります。CA6,CA16,EV71が主なウイルス型ですが、2011年以降はCVA6が主な原因ウイルスです。EV71は他のウイルスよりも髄膜炎を発症することがあり、注意を要します。
好発年齢は6か月から5歳で、6か月未満の乳児は移行免疫のために少ないです。感染性は強く、患児から母親や保母などに感染することもしばしばみられます。
【症状】
3~5日の潜伏期の後、口腔粘膜、手掌、足底などに2-3mm大の楕円形の小水疱を生じます。水疱の周囲には紅暈を伴います。水疱は透明ではなく、やや混濁して白っぽく見えます。掌蹠の水疱は掌紋の皮丘、皮溝の長軸に一致した形状をとります。皮疹は肘頭、膝蓋部、臀部、陰部などにも生じることがあります。口腔粘膜、舌ではアフタ、小潰瘍を形成し、疼痛を伴うことがあります。通常1週間程度で色素沈着をきたして消退します。肘、膝、臀部などでは水疱を伴わず、紅色丘疹となることが多いです。
38度台の発熱、感冒様症状、食欲不振、全身倦怠感、下痢、嘔吐などの前駆症状で始まることが多いです。年長児では発熱を伴わないことも多いです。
CA6感染の場合は非典型的な皮疹形態をとり易く、成人への感染もまれではなく、水痘、多形紅斑、薬疹との鑑別を要する場合もあり、皮疹が全身に拡大することもあります。また皮疹が消退した後1~2カ月後に爪変形や爪甲脱落を生じることがあります。
EV71感染では、髄膜炎や脳炎などの中枢神経症状を起こし易く、また肺水腫、急性心筋炎などの合併症を起こすこともあり、注意が必要です。2日以上の高熱、頭痛、嘔吐などがあればそれらを疑って、速やかに専門病院を紹介する必要性があります。
【診断・検査】
特徴的な臨床像から診断は比較的容易です。しかしながら先にも述べたように、全身に拡大したり、非定型的な臨床像を呈した場合はウイルス分離同定、RT-PCR法、抗体価による血清学的診断が必要になる場合もあります。
血清学的診断では急性期と2週間以上経過した後の回復期のペア血清で4倍以上の抗体価上昇があればウイルス感染の間接的な証明になります。しかしながらHFMDでは不顕性感染をおこしやすいために、流行状況や臨床像などを勘案して慎重な判断が必要となります。
【治療】
ウイルスに対する特効的な治療法はありません。ほとんどの軽症例に対しては、経過観察などでの対症療法となります。摂食障害などの例では脱水に気を付けて点滴などの水分補給を行います。中枢神経障害などに対しては専門病院への紹介治療が必要となります。

HFMDは易感染性の疾患ですが、学校保健法による出席停止の対象ではないので、登校・登園の可否は症状に応じて判断することになります。但し症状回復後もウイルスは咽頭から1~2週間、糞便中からは3~5週間排泄されるために、期間中は手洗い・うがいの励行やタオルを共用しない、他者との接触を避けるなどの注意が必要です。(医師が適当と認めた予防措置をしたとき、または症状により感染の恐れがないと認めたときは登校許可を与えてよい。ーー学校保健安全法)

参考文献

標準皮膚科学 第12版 編集 石河 晃・奥山隆平・阿部理一郎 医学書院 東京 2025
渡辺大輔 第29章 ウイルス性皮膚疾患、急性発疹症 A ウイルス性皮膚疾患 3 手足口病 pp486

皮膚疾患 最新の治療 2023-2024 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2022
伊藤寿啓 6 手足口病 XVI 感染症 [B]ウイルス pp205

皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2024
岸部麻里 6 手足口病 XV 感染症 [B]ウイルス pp210

皮膚科臨床アセット 3 ウイルス性皮膚疾患ハンドブック 総編集◎古江増隆 専門編集◎浅田秀夫 2011 東京 中山書店
馬場直子 急性発疹症とウイルス 27 手足口病/エンテロウイルス感染症 pp174~181

感染約1カ月後の爪剥離