伝染性紅斑(りんご病)

伝染性紅斑は主に小児に見られる疾患で、両頬に平手打ち様の紅斑を生じるために俗に「りんご病」と呼ばれています。
原因はヒトパルボウイルスB19による急性ウイルス性発疹症の一つです。春から夏にかけて増加し、9月には減少します。飛沫感染により気道感染を起こし、約1週間後には骨髄の赤芽球内で増殖し、ウイルス血症を引き起こします。

【臨床症状】
10~20日の潜伏感染期間の後、骨髄の赤芽球内で増殖し、ウイルス血症を引き起こし、微熱や感冒症状などの前駆症状を生じます。この時期が最も感染力が強く、感染後約2週間後に発疹を生じ、1週間ほど持続しますが、この時期にはすでに感染力を失っており、登園、登校制限をしても意味はありません。
小児の典型的な発疹は、両頬部の平手打ち様の境界鮮明なびまん性の紅斑であり、さらに引き続いて四肢に網目状、レース状の紅斑を生じます。日光や入浴、精神緊張などで、悪化、慢性化することもあります。成人の症状は多彩で、四肢遠位部に紫斑や浮腫性紅斑、丘疹を認め、全身倦怠感や関節炎を伴うことも多く(papular-pruritic gloves and socks syndrome)と呼ばれます。また風疹に酷似した発疹や、 IgA血管炎、蕁麻疹などの臨床像をとったり、中毒疹、蕁麻疹などの臨床像を呈することもあります。また時には紅斑を伴わない手足の浮腫性腫脹、四肢の関節炎、朝の手指のこわばりも見られることがあります。
【合併症】
妊娠20週までの妊婦が感染すると胎児に感染し、胎児水腫や流産の可能性もあります。但し胎児水腫を起こすのは凡そ4%であり、流産・死産はその一部なので医師が過度な不安を与えるのは禁物です。児の発達遅延、低出生体重はありますが、奇形の報告はありません。但し、胎児水腫には一部脳障害の報告はあります。
また鎌状赤血球症などの溶血性貧血患者、臓器移植、悪性腫瘍などの免疫不全患者では、赤芽球へのウイルスの持続感染のために赤芽球癆と貧血が生じることがあります。
【予防・治療】
現在のところ、ワクチンは存在しません。石鹸でよく手を洗い、マスクをする、眼や鼻、口などに触れないなど心がけます。なお妊婦は感冒症状のある人との接触を避けます。仮に検査でヒトパルボウイルスB19の感染が分かってもすぐに中絶は勧めません。皮疹や関節症状などの出現時にはすでにウイルス排出は減少しており、感染対策、出席停止などは不要です。一般的に治療は不要ですが、痒み、関節炎などには対象療法を行います。すなわち抗ヒスタミン剤、カロナールなどの鎮痛薬などです。
【診断・検査】
周囲の感染状況、特徴的な皮疹、臨床経過などより診断します。成人など非典型例では風疹、その他のウイルス性感染症、薬疹、IgA血管炎、膠原病などとの鑑別が必要となる場合もあります。一般血液検査で白血球減少、異型リンパ球の出現、血小板減少、肝酵素の上昇などをみることがあります。ヒトパルボウイルスB19IgM抗体価は感度89%、特異度99%と診断に有用ですが、特に妊婦や、15歳以上で強く同症を疑う場合にのみ保険適用になり、小児では保険適用外で算定できません。
血中IgM抗体価は感染後7~10日で上昇し、その後1~2ヵ月で低下検出されなくなります。一方IgG抗体価は感染2~3週で上昇し、長期間陽性を保ちます。
PCR法によるPVB19DNA検査も実施可能です。(保険適用外)
【発生状況】
伝染性紅斑は5類感染症小児科定点把握疾患と位置づけられています。1982年より発生動向が調査されています。ほぼ4~6年周期で大きな流行が観察されています。6~7月にピークを迎え9月に減少するといった傾向でしたが、近年はその季節性がはっきりしません。新型コロナウイルス感染症流行後、2024年中間までは低い水準で推移していましたが、その後増加傾向にあります。1999年現在のサーベイランス体制開始以降最高値を記録し、注意が必要です。
流行年では関東地方で定点当たりの報告数が増加し、その後他地方へと拡大する傾向がみられています。2025年第25週時点で関東地方に次いで多いのは北海道・東北地方です。

 

顔面の平手打ち状紅斑

上肢の紅斑 まだら状、網目状

参考文献

厚生労働省 ホームページ 伝染性紅斑

国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト 伝染性紅斑

皮膚疾患 最新の治療 2023-2024 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2022
古田淳一 7 伝染性紅斑(ヒトパルボウイルスB19感染症) XVI 感染症 [B]ウイルス pp211

皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2024
中井井浩三 7 伝染性紅斑(ヒトパルボウイルスB19感染症) XV 感染症 [B]ウイルス pp206

皮膚科臨床アセット 3 ウイルス性皮膚疾患ハンドブック 総編集◎古江増隆 専門編集◎浅田秀夫 2011 東京 中山書店
五十嵐敦之 急性発疹症とウイルス 29 伝染性紅斑 pp186~191