掌蹠膿疱症にオテズラ適応追加

掌蹠膿疱症は手のひら、足の裏に無菌性の膿疱が生じる疾患で、とりわけ日本人に多い疾患です。以前にもまとめて当ブログにアップしましたが、中々特効的な治療法がなく、慢性に経過し悩ましい疾患です。手掌、足底のごく限られた部位に見られる疾患で、その大変さは患者さんでないと実感できないかもしれません。
然し、患者さんの生の声を聞くと本当に悩ましく人生のQOLをひどく低下させています。
幾つかの例をあげると。
・まるでガラスの上か画鋲の上を歩いている感覚だ。
・手を人前に出せない。
・釣り銭を放り投げられた。
・手袋を手放したことがない。
・手足の皮疹だけではなく、関節の痛みが辛い。
などなど健常人には想像もできないような人知れずの悩みを抱えていることがわかります。
本年の3月に掌蹠膿疱症の全身療法の治療薬としてアプレミラストが承認されました。そして、この薬剤の有効性、有用性のデータが出てきています。すでに乾癬に対しては広く皮膚科開業医レベルでも使用されている実績のある薬剤です。
2025年6月29日東京でオテズラ錠適応追加記念講演会が開催されました。出席してみて、その有効性に目を見張りましたので、報告してみます。
過去の記事も参考にして下さい。
掌蹠膿疱症(1) 2014.2.17
掌蹠膿疱症(2)症状 2014.2.22
掌蹠膿疱症(3)病因 2014.2.27
掌蹠膿疱症(4)治療 2014.3.2
掌蹠膿疱症update 2018.4.25 ここではオテズラの有効性についても一寸触れています。

掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis/pustulosis palmo-plantaris.PPP)の病因・診断・臨床症状には過去に書きましたし、2018年時とほぼ変わっていないので割愛します。

治療アルゴリズム (照井 正 PPPのトリセツより)
I)生活指導・悪化因子の除去
・禁煙
病巣感染の治療
・歯性感染治療
・扁桃摘出術
・併存疾患のコントロール
II)皮膚症状に対する治療
外用療法
・副腎皮質ステロイド
・活性型ビタミンD3
紫外線療法
・PUVA療法
・NB-UVB療法
・エキシマライト
成人(非妊婦)に対する全身療法
・エトレチナート
・シクロスポリン
・PDE4阻害薬
・副腎皮質ステロイド
・メトトレキサート
・抗菌薬
・漢方薬
・グセルクマブ(IL-23p19阻害薬)
・その他の生物学的製剤
・顆粒球吸着療法
III)関節症状に対する治療
皮膚症状に加えて
+NSAIDS
+メトトレキサート
+シクロスポリン
+PDE4阻害薬
+グセルクマブ(IL-23p19阻害薬)
+その他の生物学的製剤
+顆粒球吸着療法

当日の講演会の骨子、印象をまとめました。

生活指導を行い、外用療法、紫外線療法を施行しても改善しない場合、全身療法が選択されるのですが、実はTNF阻害剤、メトトレキサート、シクロスポリンは保険適用外の薬剤であり、全身療法は限られていました。生物学的製剤のグセルクマブは適応になっていますが、乾癬の場合より、効きづらい印象があり、効果の立ち上がりもやや遅いとのことです。
オテズラのPPPに対する効果は、乾癬に対する場合より速効性があり、スターターキットの使用段階から効果の現れるケースもあるとのことです。約6週間で効果は安定し、またプラシーボを用いた治験でも4週間で実薬の効果に追いついたそうです。確かに52週などの長期間での有効性は生物学的製剤に約10%程度は劣るとのことですが、乾癬に対するオテズラの効果の低さ(一部では3割バッターとも評される)、遅効性からみると、より期待できる可能性が指摘されました。PPPではTh2の特徴を持つ特異なTh17細胞が関与しているともいわれ、これが炎症性サイトカインを幅広く低下、調節するばかりではなくIL-10といった抗炎症サイトカインを活性化するオテズラがPPPに有効性を示す理由である可能性も指摘されました。副作用に関しては長年乾癬でその安全性が立証されており、今後難治性PPPの全身療法の第1選択肢となるうるとのコメントもありました。まだ適応追加されたばかりで、実臨床での評価は未だし、ですが期待が持てそうです。(2018年には生物学的製剤のグセルクマブが承認され、2023年にはリサンキズマブ、ブロダルマブが承認されています。長期的にはこれらの方が有効率は高いので、これらの製剤との使い分け、比較はこれからの課題かと思われます。)

オテズラ錠 適応追加記念講演会 2025年6月29日  主催:アムジェン(株)
~掌蹠膿疱症における新たな治療戦略~
Opening 照井 正 (敬称 略)
講演1  PPPとPAOの病態と本質  小林里美 
講演2 治験エビデンスと作用機序から考えるOTEZLAの有用性  村上正基 
講演3 PDE4阻害薬アプレミラストがもたらす掌蹠膿疱症患者さんへのベネフィット 多田弥生 
Closing 大久保ゆかり 

PPPのトリセツ 掌蹠膿疱症の適切な診断と治療の考え方 照井 正