雨のニューヨーク

 ニューヨークに到着してから数日はお天気に恵まれて、セントラル・パークなどを散策などしたのですが、次第に天気が下り坂になってきてしまいました。
一日中降るわけでもありませんでしたが、空はどんよりとして、時折ザーッと降りだします。
ニューヨーク全体を知るのに観光バスは一番便利というか安直と思い、2日間どこでも乗り降りできるという便利そうな観光バスのチケットを購入しました。
その日も天気は今一でしたが、タイムズスクウェアからダウンタウンを一周して戻ってくるという2階建てのバスに乗りました。ビニールの簡単な合羽を渡されましたが、さすがに2階席で雨に打たれながら観光する気にもなれずに1階席に座りました。道路は結構混んでいて、しかも運転がやけに荒い。急発進、急停車は何とも思っていないようでしょっちゅうでした。日本語のイヤフォンはありましたが、建物の説明を聞いても見えるのは道路とビルの1,2階程度でちっとも観光にはなりませんでした。しかもあちこちに停まる度に観光客が乗り降りするのですが、その日はやたらインド人の団体が多かったです。あとはやはり中国語と韓国語が飛び交い、多分日本人はいなかったように思われました。これも国の勢いなのか、日本では丁度ゴールデンウイークに重なり、敢えて今のアメリカに行く必要もないと避けたせいでしょうか。でもバブルの頃はどこに行っても日本人で溢れかえっていました。ロウアー・マンハッタン、ウォール・ストリートでも下車する気になれず、そのままバスに乗り続けていました。マンハッタンの西側のハドソン・リバー沿いを北上すると遠く対岸にニュージャージーが霞んでみえました。こちらも高層ビルが林立していました。毎日、何万人もの人々が地下道を通り、マンハッタンへと通勤しているのでしょう。ここは日本人駐在員にも人気のエリアだそうです。バスは北上を続けますが、倉庫街が立ち並び、ニューヨークの人々の衣食を賄っているように思われました。バスの窓からあのリトル・アイランドも見えました。意外と小さい感じでした。天気が良ければ途中下車して、ハドソン・ヤーズ、ハイラインの空中散歩をとも思っていたのですが、ここもスルー。バスはポート・オーソリティ・バス・ターミナルを経てタイムズ・スクウェアに帰ってきました。結局翌日も雨天で観光バスはこの一回きりとなり、逆にお高い買い物となってしまいました。
翌日も雨模様でしたが、ブルックリン・ブリッジに行ってみることにしました。いろいろな映画にも出てくる名所です。6号線down townでBrooklyn Bridge City Hall駅で降りると、すぐに橋の入り口へ。小雨混じりでしたが、結構人出は多かったです。昨日バスで貰ったビニールの簡易合羽をかぶり歩き出しました。木の床、鉄のワイヤー、鉄板、ボルトなど古びていますが、全てががっちりと作ってありました。これが1883年、明治の初期に作られた建造物というのが凄い。100年以上経っているのにがっちりとしている。床板は一部朽ちかけているところもありましたが、分厚い板はしっかりしていました。その上を何千万人の人が歩いたのでしょう。景色も素晴らしかったけれど、それらの無骨ながら重厚な部分をしばし見入っていました。近年は来訪の記念か恋人達の愛の証か、鍵を橋の側面のワイヤーに一杯掛けてありましたが、ごちゃごちゃとしてあまり美しくない。折角の古い歴史的な建造物には似つかわしくない風潮のように思いました。橋を渡りきる頃には雨もあがり、City Bikeでブルックリンやウイリアムズバーグを回ろうかとも思いましたが、すぐには自転車のプールが見つからずあきらめました。ブルックリン橋やマンハッタン橋のたもとは公園や遊歩道になっていて、川端で持参したパンやコーラの昼食をとりました。遠くマンハッタンのビル群が霞んでみえました。曇りがちではありましたが、ゆったりと一人誰にも邪魔されずにニューヨークを眺めているのもいいものだと思いました。
午後は地下鉄でマンハッタンに戻り、ロックフェラーセンター周辺から5番街に出て、セント・パトリック大聖堂などを見ながら通りを北上しました。雨は時折ザーと降るものの、小雨から霧雨状態でした。それでもさすがに高級店など立ち並ぶ大通りは結構な人が歩いていました。ユニクロ、ミキモトなどもありましたが、Nikeのビルが一番賑わっているようでした。さらに北上するとトランプタワーがありました。時節柄どんなものか覗いてみました。あっけない程入口の警備などなく、ビルの2階、地下階ではレストランや店舗などありましたが、ごく普通に行ける感じでした。ただ、さすがに高層階へのエレベーターの前にはがっちりした警備員が数名いて近づき難い雰囲気でしたが。冷やかしもそこそこにビルをでました。その隣にはかの有名なティファニーがありました。かつて「ティファニーで朝食を」という映画があって、オードリー・ヘップバーンは好きな女優だし、主題歌のムーン・リバーも好きですが、映画の中身は今一で、しかも中に出てくる日本人の扱いがひどい、まるで人種差別のようなふざけた人物の扱いでがっかりしたことを覚えています。あの頃の戦後の日本人に対する扱いはそんなものかとも思いはしましたが。それは兎も角、ティファニーに立ち寄ってみました。日本なら宝石店やデパートの宝石コーナーなど入ったことはなく通り過ぎるばかりでしたが、外国だと割とすんなり入れました。旅の恥はかき捨てか、非日常的な感覚なのかもしれません。入ってうろうろしていると白人の紳士が近づいてきました。なんと流ちょうな日本語です。びっくりしていると私は日本で生まれ育ちました、とのことで納得。ピアスをみたいというと(ピアスとは言わずイヤリングというみたい)一応見せてはくれましたが、シンプルなものといっても高齢の日本婦人には大きい感じ。ゴージャスだけどお値段もゴージャスでした。もっとシンプルというとそれなら5階へと、さりげなくエレベーターの方へ誘導されました。5階でこれなら老婦人でも、と思われる小さくシンプルなものを購入しました。
摩天楼からの夕焼けを見たいとエンパイアステートビルを予約していたのですが、1日目も雨で、翌日に来い、と変更されるも翌日も小雨。仕方なく上に上がってみましたが、残念ながら全く眺望は利かず、外に出ても雨風のみでした。皮肉なことにニューヨークを離れる頃になってやっと天気が回復し、ビル群もみえるようになりました。