日本皮膚科学会総会in横浜

久しぶりの横浜の皮膚科総会に参加しました。
海外旅行などで、皮膚科の勉強、診療から離れ休暇モードになっていた頭には一寸刺激があり、新鮮でした。
とはいっても、最近はハイブリッド学会なので学会場に行ったのは一日のみでした。そう、懇親会の日のみです。
WEB講演というのはとても便利です。画面はしっかりパソコンで見られますし、英語の講演では、字幕、同時通訳もつきます。(ただ、残念なことに全会場の半分くらいしかカバーできないし、ポスターは見られないのです。)それに、朝早くはしっかり身繕いしなくても聴講できます。ただ、便利さにかまけて、つい居眠りしたり、集中力が落ちる傾向があるのは自分だけでしょうか。
総会で残念なのは、14会場もあって、あれもこれも聴講したいのに、できるのはわずかに1か所だけということです。ただ後日E-learning という企画があって多くの講演の聴講はできるのですが。しかしEADVでは、期間中でもオンデマンドで多くの講演が聴講できたようでしたので、そのようにしてもらえば有難いですが。(費用が嵩むなど難しい面もあるかもしれませんが)。
今回の学会でインパクトというか衝撃的だったのは、島田眞路先生の「日本の科学研究力の著明低下について、その原因と対策を考える」という講演でした。
島田先生は前日本皮膚科学会の理事長でもあり、山梨大学の学長でもありました。
コロナ禍の時期に日本政府の対応の拙さを歯に衣着せぬ物言いで舌鋒鋭く、役人に異議申し立てをしていたのを思い出します。単なる口先だけの医療人ではなくて、自ら率先して陣頭に立ち山梨県を越えて新型コロナ対策に当たり成果を上げていました。兎に角自分でも言っていましたが、義侠心が強い。「義を見てせざるは勇無きなり」を地でいっているような人です。
彼は日本の科学研究力、医療がかくも世界に遅れをとったのは、日本政府、とりわけ財務省の長期的な視点が無かったからだといいます。東大卒なのでかつての母校の同僚などの人材が多い役所でしょうが、幾度となく議論し、戦ってきたといいます。しかし硬直化した官僚機構は動かない。国力の低下は畢竟経済力の低下、バブルが弾けたことに起因するのでしょうが、日本以外のほとんどの国が発展したのに何故にこの優秀で勤勉な日本だけが、取り残されたのだろうと素人目にも思ってしまいます。
兎に角財務省の緊縮財政、国立大学の独立法人化が研究力の低下をきたしたといいます。国立大学運営費交付金は法人化後10年で10%減額、財政赤字で危機をあおり、教育研究への投資を怠った当然の結果だと切り捨てました。確かに世界のトップ10%論文数の推移、凋落は凄まじいものがあります。かつては米国についで、2,3位につけていたものが、一昨年はスペイン、韓国に負け12位に、昨年は13位とイランの後塵を拝してしまったとのことです。その表をみせられて一市井の医師ながら、ここまでひどいのか、と愕然としました。この先も少子高齢化は加速し、明るい未来は見えてきません。
彼は今すぐにでも科学研究への投資を大々的におこなうべきだと述べました。
どこで、日本は国の方針を間違ったのだろう。まさに第二の敗戦のようです。まるで先の大戦での灰燼に帰した日本の敗戦を思い起こさせるようです。優秀なはずの軍の上層部たちは、勝ち目のない戦を認識しながら大本営発表をし、ずるずると大敗戦まで引きずり、誰もその責任を取りませんでした。この国は個人としては優秀な人もいながら、集団、国全体となるとどこか修正がきかない欠点を持っているような気がしてなりません。
医療分野においても、機構専門医制度の欠点、失敗を挙げられました。そのため若手研究者が減った、マッチング制度の影響で若手医師が地方を敬遠し、地方の医療崩壊を助長しかねない、など。そもそも役人の天下り先の温床だと。ここまで国の施策を批判することをあからさまに書いていいのだろうか、と小心な小生などは躊躇しますが、学会抄録にも書いてあるし、日頃正論をどうどうと述べられている先生だからいいのでしょう。(と勝手に思いアップしました。)
ともかく、島田先生の言質は極論かもしれませんが、国を愛し、科学を愛すればこその言葉として非常に共感できました。
久しぶりに講演を聴いて、疲れた頭には夜のパシフィコ横浜の展示会場での懇親会はご褒美でした。旧知の先生と会ったり、美味しいものをいただいたり、余興があったり。ポスターや企業展示などの広い展示会場では様々なイベントがありました。マグロの解体ショー、中国雑技団の演技、パントマイムの余興など主催の東邦大学の石河先生はじめの関係者の方々に感謝でした。