🔷毛孔性苔癬(Lichen Pilaris)
毛孔性苔癬は欧米ではKeratosis pilaris(毛孔性角化症)と呼ばれるようです。毛孔一致性の1mm程度の角化性丘疹が四肢中枢部の伸側や臀部などに散在ないしは集簇して多発します。ときに周囲に紅斑を伴ってかゆみを生じることもありますが、一般的には自覚症状はありません。
ごくありふれた疾患でサメ肌、トリ肌、おろし金様と形容されます。女性に多く、小児期に発症し、思春期に目立ってきますが、成人(中年期以降)になると、徐々に軽快、消退してくるケースも多いです。家族歴を有することが多く、不完全浸透の常染色体顕性遺伝とされています。ただ思春期以降の日本人の半数近くに多少の毛孔性苔癬の所見があり、これは皮膚病というよりは肌質であり、気にならなければ必ずしも治療は要しません。
肥満者で目立ち易く、アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬に合併していることもあります。またI型糖尿病、ダウン症候群でもみられます。
さらに近年メラノーマの治療に用いられるRAS/MAPKシグナル伝達経路のBRAF遺伝子を阻害するBRAF阻害薬やチロシンキナーゼなどの分子標的薬の副作用としても毛孔性苔癬がみられることが明らかになってきました(この経路でRASやRAFなどに遺伝子異常を有する場合は経路が常に活性化され、細胞の異常増殖をきたす。メラノーマではRAFのタイプのうち、BRAF遺伝子に変異が見られることがある。)また、Noonan症候群やcardio-facio-cutaneous(CFC)症候群(心奇形、特異顔貌、骨格異常、知的障害といった多系統の組織に機能・形成異常を引き起こす先天性疾患群でRAS/MAPK経路の活性化異常がある)など一部のRASopathy関連の疾患群でも毛孔性角化がみられこの経路の過剰活性化が発症に関与していることがうかがわれます。
🔷顔面毛包性紅斑黒皮症(Erythromelanosis follicularis faciei)
耳前部から頬部、側頸部にかけて比較的境界明瞭な紅褐色局面を生じます。微細な毛細血管拡張を伴います。局面内には毛孔一致性の角化性丘疹が多発して細顆粒状を呈します。黄色人種の青年に好発しますが、時に女子にも発症します。しばしば毛孔性苔癬を合併するのでその一異型ともみられています。加齢とともに自然消退傾向を示します。
治療の希望は若年女性の整容的な訴えによることが多いようです。まずは多くの人にみられる肌質であること、冬季に悪化するが年齢とともに自然に消退していくこと、外用による角化への対症療法が主で、止めれば再発し易いことなどを理解してもらいます。これらを勘案しながら、希望があれば日常的なスキンケア、角化を軽快させるサリチル酸や尿素製剤などの角質溶解薬の外用など無理のないマイルドな治療を行っていきます。活性型ビタミンD3製剤、レチノイド製剤の外用も行われていますが効果は不定です。それでも治療満足度が少なければ、保険適用外ながら乳酸など各種製剤によるケミカルピーリング、Qスイッチレーザーや、フラクショナルCO2レーザー照射などが美容皮膚科などで施行されているようです。
参考文献
皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋健造 佐伯秀久 南江堂 東京 2024
朝比奈昭彦 XVII 腫瘍性疾患 A 上皮性腫瘍 3 毛孔性苔癬、顔面毛包性黒皮症 pp167
皮膚疾患 最新の治療 2023-2024 編集 高橋健造 佐伯秀久 南江堂 東京 2022
川村龍吉 XIV 角化症 A 上皮性腫瘍 3 毛孔性苔癬、顔面毛包性黒皮症 pp170
今日の皮膚疾患治療指針 第5版 編集 佐藤伸一 藤本 学 門野岳史 椛島健治 医学書院 東京2022
高橋健造 8章 角化症 毛孔性苔癬 pp420-422