鶏眼(うおのめ)・胼胝(たこ)

後天性の角化症にも種々のものがありますが、日常外来で最も多くみられるのが鶏眼(うおのめ)、胼胝(たこ)でしょう。いずれも機械的な外力の反復する部位に、防御機転として生じる限局性の角質増殖です。
🔷胼胝(胼胝腫)(たこ)
 俗にペンだこ、座りだこ、鉄棒まめ、靴擦れだこ、などと呼称されるようにスポーツ、職業、習慣などによって長期間に亘って反復的、間欠的に圧迫、摩擦などの機械的な刺激が加わることによって生じます。刺激部位に淡黄色・扁平のやや楕円形の隆起した角質増殖性局面が見られます。好発部位は手掌、足底で下床に骨のある部位に多いですが、同様の機転があれば全身のどこにでも生じえます。
 仙骨部では尾骨の変形や自転車などの慢性的な刺激により瘤状に隆起することがあります。またバイオリン・ビオラ奏者などの側顎部に限局して生じる硬結・苔癬化・色素沈着などもこの一種ですがfiddler’s neckとも呼ばれます。
 胼胝は鶏眼と異なり、角質増殖の底面はほぼ水平ですので一般に痛みは生じません。スピール膏を病変部より少し小さめに切って貼り、ずれないようにテープ等で固定して数日後、角質が軟化したところをメス、カミソリ、専用のカッターなどで除去します。前処置なしで削ることもあります。
角質による圧迫で真皮が障害されたり。浸軟、内部が空洞化潰瘍化したような場合は壊死組織を取り除き抗潰瘍療法を行うこともあります。
 削りにくい部位などにはサリチル酸ワセリンを1~2回/日塗布します。

🔷鶏眼(うおのめ)
 下床に骨を有する部位に長期間圧迫が加わったことによって生じます。肥厚した角質が病変の中央部で円錐状に下方へ突出するような形態をとり、これがいわゆる”め”の部分にあたります。淡黄色半透明の色調で、好発部位は足底、特に第1趾や第5趾の中足趾節関節部や踵部で、また足趾先端部分、第5趾外側縁、第4,5足趾間などに好発します。”め”が真皮方向に垂直に突き刺さるような圧が加わるために歩行時などに激痛を伴います。
典型的なものでは肉眼、ルーペなどで中央部に半透明な角質柱”め”を認めることで容易に診断できます。鶏眼の場合ウイルス性いぼ(尋常性疣贅)との鑑別が最も重要です。いぼの場合は角化部表面を削っていくと点状の血管がみられます。ダーモスコピー像でより明らかになります。小児が魚の目として受診した場合はほとんどが尋常性疣贅です。手掌、足底に孤立性に生じるドーム状、噴火口状の小結節で蟻塚様の外観を呈するいぼをミルメシアと呼び幼少児に好発します。HPV-1型のウイルス感染ですが、鶏眼との鑑別に注意を要します。
足底に鶏眼あるいは疣贅状の点状の角化が多数みられる場合は点状掌蹠角化症、Cowden病なども鑑別として考える必要があります。

 治療はメスや魚の目カッター、眼科剪刀などで円錐状の角化部分を出血しないレベルで除去します。横から圧迫し、中央部分を持ち上げるように剪刀でくり抜くと行い易いです。
 予防的には足の大きさ・形に合った靴を選ぶ、足先にやや余裕があり、靴の中で足が動かないように足首で紐などで固定できるタイプのものが良いです。また病変部を除圧する中敷きや、趾間を広げるドーナツ状のクッション、シリコンパットなども効果的です。

参考文献

皮膚疾患 最新の治療 2023-2024  編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2023
米田耕造 XIV 角化症 5 鶏眼(うおのめ)、胼胝(たこ) pp 172

皮膚疾患 最新の治療 2025-2026  編集 高橋建造 佐伯秀久 南江堂 東京 2024
井上卓也 XIII 角化症 5 鶏眼(うおのめ)、胼胝(たこ) pp 170