現在では老人性疣贅というより、脂漏性角化症といった方が適切かもしれません。若年者や中年女性に向かって”老人性”はないだろう、と医師も思うし、患者さんにとってはムッとする人もあるかもしれません。しかしながら、脂漏性角化症と告げられても何のことかさっぱり分からないけど、老人性イボと告げられるとああそうかとピンときます。そういう意味では前者の病名もあながち捨てがたいものです。60歳代では80%に、80歳以上ではほぼ全員にみられます。老化や紫外線の影響によるとされています。
主に顔、頭部、頚、腕、手背などの露光部や体幹に多発してくる丘疹、結節状隆起で1,2mm大から1,2cm大の大きいものもあり、正常色から褐色調、黒色調と様々あります。表面は平滑だったり、疣状で粗造だったりします。初期病変は老人性色素斑と区別できずほぼ平らです。基底細胞が増えるタイプ、有棘細胞が増えるタイプ、角質増殖型など臨床像と共に、組織像も極めて多彩です。しかし良性のもので悪性化することはありません。
ただし、一般に黒色調を呈するので典型的なものは別として、悪性黒色腫、基底細胞癌、日光角化症、有棘細胞癌など悪性の癌と紛らわしいこともままあり、またこれらが混在することもあるので注意を要します。
近年はダーモスコピーの発達により、かなりの確率で切らずに診断できるようになってきました。しかしながらその道の専門家でも診断に苦慮するケースもあり、最終診断は病理診断で確定します。
脂漏性角化症自体は良性疾患ですが、Leser-Trelat症候群といって、数か月のうちに脂漏性角化症が急速に拡大、多発し、痒みを伴う場合は内臓悪性腫瘍(胃がんなど)を伴うこともあり、(これをデルマドロームという)注意を要します。
治療は必須ではありませんが、大きさ、状況などにより疣冷凍凝固法、レーザー、手術療法などが施行されています。