オテズラ発売1周年

 乾癬治療薬オテズラの発売から1年たち、発売1周年記念の講演会が各地で開催されています。千葉でも講演会が開催されました。帝京大学の多田弥生先生が特別講演をされました。「乾癬治療の新たな選択肢~オテズラ錠の意義について」という演題でした。新進気鋭の教授で、乾癬の基礎から臨床に精通されている先生です。多くの文献を渉猟しての、また500名以上の患者さんの臨床を通しての精緻かつ明快な講演はいつも聴衆に感銘を与えます。その講演の素晴らしさの秘密を聞くと、師の東大佐藤教授のプレゼン指導のたまものだとのことでした。
たまたま、その前座を小生が務めました。「開業医の立場からみたオテズラ錠の使用経験」という題をつけました。単に使用経験の報告をしただけなので、主講演と比べるべくもなく、見劣りした内容でしたが、まあ実地医家の生の印象という意味ではややここに書く意味もあるかと思いました(小生としてはかなり一生懸命にまとめたつもりですが、何分慣れない発表で、あまりインパクトもなかったかもしれません)。 

 1年間の当院でのオテズラ使用患者さんは16名です。実は2名の方は初回投与後来院されませんでした。受診歴の短い患者さんで、ややじっくりとした説明が足りなかったのかもしれません。それ以外の人は脱落なく長い人は1年を過ぎました。俗にオテズラは5割の人に5割程度効くといわれてもいますが、まがりなりにも全員続いているということは多少ならばもっと多くの割合で効く印象を持ちました。
【使用期間】
 …….2……3……4……5…..6…….7…….8……9…..10……11……12 (月)
男 …………..2……………….1…….1…………..2……1…….1…….1
女 …….1………………..1……………………….2…………..2…….1

【全体の有効性】
         …………………….著効  有効 やや有効 無効
重症(BSA10%以上)……………………..1   1    2
中等症(BSA5~10%)……………………..5   4
軽症(BSA5%以下)………………………2   1
BSA: Body Surface area
16名中全量内服10名 6名は半量程度内服、きっちり飲めばもっと有効性はあがるかも
【副作用】
下痢 13 初期のみで軽度  3 便秘が治癒で快調 2 初期は下痢ひどく外出が怖かった
胸やけ、吐き気 5. 中長期に起こることもあり、意外と注意を要する事象かも
風邪をひき易くなった 3
胃もたれ、腹痛、頭痛、体力低下、食欲減退 1~2
体重減少 3Kg減 4Kg減 5Kg減 各1
【患者さんのコメント(肯定的なもの)】
・かゆみがなくなった
・スカートがはけるようになった
・フケがなくなり、黒い服が着れるようになった
・落屑がなくなり家の掃除が楽になった、と妻がいう
・指の腫れが減り、爪が良くなった
【患者さんのコメント(やや否定的なもの)】
・薬代が高い(保険3割でも1か月17000円くらい)
・当初は下痢が心配で出かけるのが怖かった
・風邪をひき易くなった、鼻水が出る、以前より風邪が長引き、治りにくくなった
・体力がなくなった
・時々胸焼け、むかむかする感じがある
・良くなったがいつまで薬を飲むのか

上記のコメントも、コストパフォーマンスで評価はかなり違うでしょう。良く効いた人は、それ程高いとも感じないし、あまり効かない人、いろいろ差しさわりのある人は高い割に効かないなーと感じるでしょう。オテズラのバイアスのかからない評価ではありませんが、まあ生の声ということはできます。
ただ重症の人でも素晴らしく効く人もあります。岩手医大の遠藤先生はこういった例を「ドはまりパターン」と呼んでいるそうですが、どんな人が効いて、どんな人が効きにくいのかはこれからの課題のようです。

オテズラは妊娠、小児、癌患者など一部の禁忌をのぞけば多くの中等度の乾癬患者さんに使え、ある程度関節症や爪乾癬にも効くし、検査も要らず、だめなら減量、中止も再開も可能で、クリニック向きの薬剤かもしれません。
ただ、新薬なのであまり「テキトー」に処方するのも問題かもしれませんが、これから専門の先生方のデータ蓄積で適切な長期使用指針が示されていくかと思います。

あまり、参考にはならないかもしれない一現場の印象記でした。