(類)天疱瘡・治療

 第87回日本皮膚科学会東京支部学術大会で、水疱症の治療:「匠の治療」から

水疱症の治療については以前調べてまとめました。数年たって今回の講演を聴いて進歩、変化したことを中心に知識をアップデートして書いてみたいと思います。以前のまとめは「天疱瘡治療」(2020.7.30)を参照して下さい。

天疱瘡 治療

【天疱瘡】難治例の攻め方のコツ 山上 淳
 治療は国際的な寛解の定義から「プレドニゾロン0.2mg/kg/日または10mg/日以下および最小限の補助療法(免疫抑制薬など)の併用により、天疱瘡の臨床症状がない状態を維持すること」を到達目標としていることには変わりはない。
 2020年当時はB細胞をターゲットにした抗CDモノクローナル抗体であるリツキシマブはまだ治験段階であったが、2021年12月に保険適応拡大が承認された。
 基本的にはステロイド内服を中心に初期導入治療が行われるが、その減量は臨床的な病勢による。病勢評価にはPDAI(Pemphigus Disease Area Index)が有用である。普通2週間経過をみて判断するが、追加治療の必要性の有無は両者間ですでに1週間後のPDAIの低下率で開きがあり(1週間で7割程度、2週間で4割程度)2週間ではさらに拡大する。これを勘案すると1週間後のPDAIの低下率をみて追加治療の必要性を判断すべきであろう。
難治例には2種類がある。
第一は当初から病勢のコントロールができない例。これには免疫抑制剤、あるいは血漿交換療法やステロイドパルス、免疫グロブリン大量療法などが追加されてきた。
第二はプレドニゾロンを減量すると(20mg程度)再発、再燃する例。これにはIVIG、エンドキサンなどが用いられてきた。
これら難治例に対して、リツキシマブは有効であり、1サイクルで76%が寛解、しかしながら40%は再発している。しかし反復することによって寛解率は上昇する。リツキシマブは治療によりBリンパ球が枯渇し免疫抑制状態となる可能性があるため、感染症には十分に注意する必要がある。

【類天疱瘡】類天疱瘡におけるステロイド全身療法の再考 氏家英之

「類天疱瘡治療」(2020.8.20)を参照して下さい。

類天疱瘡 治療

類天疱瘡は60歳以上の高齢者に好発する。重症度はBPDAI(Bullous Pemphigoid Disease Area Index)を参考にして判断し治療を選択する。BPDAIが20以下ならば軽症、50~60以上ならば重症として対処する。
軽症ではドキシサイクリン200mg/日とプレドニゾロン0.5mg/kg/dayとでは効果はほぼ同等とされるが、重症になるとドキシサイクリン単独ではきつい。
 ヨーロッパと本邦のガイドラインとでは若干ニュアンスが異なる。
ヨーロッパのガイドラインはフランスが主導して作成された。強力なステロイド剤の外用がプレドニゾロン内服と並んで第一選択であり、軽症は勿論、重症においても外用療法が用いられることもある。またプレドニゾロンの初期投与量は0.5mg/kg/日と本邦より少ない設定となっている。
 軽症ではデルモベート(strongest)の外用1回1~5gx2回/日を頚から下の病変部より広くに塗布する。中等症から重症では5~15gx1日2回を頚から下の全身にくまなく塗布する。2週間たったら、BPDAIを確認しながら隔日、週2回、週1回と4週間ごとに減量する。副作用として皮膚萎縮、紫斑、出血などが出易いことに注意が必要である。
 本邦ではステロイド(プレドニゾロン)内服が第一選択となる。
軽症例では0.2~0.3mg/kg/日、中等症、重症では0.5~1.0mg/kg/日の投与を行う。重症例ではパルス療法も行うこともある。ステロイド単剤で効果不十分な場合は種々の免疫抑制薬(MTX,MMF,CyA,アザチオプリンなど)を併用することがある。
その他にIVIG療法、血漿交換療法、シクロホスファミドパルス療法も行われる。
 天疱瘡と同様にリツキシマブの有効性も報告されている(保険未収載)。
保険適用外ながら、オマリズマブやデュピクセントの有効性の報告もなされている。さらに今後の生物学的製剤への希望が高まっている。

参考文献

皮膚疾患 最新の治療 2023-2024 編集 高橋健造 佐伯秀久 南江堂 2023
氏家英之 1 天疱瘡 pp139-141
鶴田大輔 3 類天疱瘡,後天性表皮水疱症 pp143-145