皮膚結核(結核疹)

結核菌またはその産生物に対する過剰な免疫反応によって生じる皮疹を結核疹と呼びます。基本的には病巣に結核菌は認められずに、肺など他臓器の結核病巣から血行性に抗原が伝播して生じると考えられています。但し、PCR法で陽性になったり、ごくわずかな菌が検出される事もあり、最近では結核疹も真正結核の一種との考えもあります。
結核菌に対する強い細胞性免疫があり、ツベルクリン反応には強陽性を示します。以前は結核疹と考えられていた一群は現在酒さの亜型と考えられています。(顔面播種状粟粒性狼瘡:Lupus milliaris disseminatus faciei:LMDF)
1)腺病性苔癬(Micropapular; lichen scrofulosum)
主に青少年の躯幹四肢に粟粒大の皮膚色から紅褐色丘疹が散在性にあるいは集簇してみられます。かつてはみられたものの、現在では稀です。初感染後、BCG接種後、またはM. avium感染後にみられたとの報告もあります。他のタイプの皮膚結核と共存することもあります。予後は良好で数か月以内に自然消退します。
皮疹の性状から、光沢苔癬、毛孔性苔癬、サルコイドーシス、2期梅毒などとの鑑別を要します。
2)壊疽性丘疹状結核疹(Papular; papulonecrotic tuberculids)
主に対称性に四肢を侵します。顔、耳などにも生じることがあります。個々の皮疹は結痂、小潰瘍化し、痘瘡様の瘢痕、色素沈着を残します。結核菌またはその代謝産物に対して生じる壊死性血管炎と考えられています。新旧疹が混在して数か月続くこともありますが、予後は良好です。血行性の極く僅かな結核菌の散布によるとの考えもありますが、病巣にはほぼ結核菌は認められません。多くの例で他の部位の結核が見つけられますが、その頻度は報告によりばらつきがあります。陰茎結核疹(penis tubeluculid)もこの形の亜型と考えられています。臨床的組織的に慢性、急性苔癬状粃糠疹(滴状類乾癬)やキルレ病、皮膚白血球破砕性血管炎、慢性痒疹など多くの疾患との鑑別を要します。ツ反、IGRA,抗結核薬の治療効果などが手助けになり得ます。
3)Bazin硬結性紅斑(Nodular; erythema induratum Bazin)
結核疹の中で最も多い型ですが、全結核の減少に伴って、近年は減少傾向にあります。循環の悪い下腿後面で、若い女性に好発しますが、時に四肢、躯幹にも生じます。鶏卵大までの紅色結節で、結節性紅斑に似ますが、慢性化すると暗紅色となり硬結を認めます。中央部はしばしば軟化して潰瘍を生じます。圧痛、自発痛を伴います。結核に関連する場合と、全身検索でも結核の関連がないタイプがあります。これをnodular vasculitisと呼称します。このタイプでは、潰瘍形成は比較的に少ないとされます。組織学的に小葉性脂肪織炎と乾酪壊死を伴う類上皮性肉芽腫を認めます。時に静脈炎が見られます。治療は抗結核薬の多剤併用療法を行いますが、結核との関連の認められない場合は他の治療法も選択します。
 結核疹の治療も原則としては、他の真正皮膚結核と同様に抗結核薬の多剤併用療法が行われますが、中には全身検索やIGRAなどで、結核との関連が見られない場合は上記のnodular vasculitisのように抗結核薬の治療を行わない場合もあります。