ボー線条(Beau’s line)

ボー線条(Beau’s line)とは、すべての爪甲のほぼ同じ位置に横走する線条の溝を形成するものです。
1836年JHS Beauはチフスから回復した患者の爪に横走する線条が生じることを報告しました。その後、様々な原因によって同様な線条が生じることが知られるようになりましたが、最初の報告者の名前を冠してBeau線条と呼ばれるようになりました。
その病態は、様々な原因によって爪母レベルで爪甲の成長が一時的に減速、あるいは停止して爪甲が薄くなり横溝を形成するもので、その原因が取り除かれれば元に戻ります。
溝の幅は病因の長さに相関して、ひどく長ければ深く幅広くなりますし、発症が急激か徐々にかによって、スロープの傾きが変わってきます。指の爪は一般的に一日0.1~0.15mm伸びるとされるので溝の位置によって大よその原因の時期を推定することができます。
ただし、様々な因子によって爪の成長スピードは変っていますので一律に決めることはできません。拇指はスピードが速く5,6か月前までの情報を持ちますが、拇趾はスピードが遅いので2年前までの情報を持つとされます。
抗がん剤などの治療では、その治療クールの間隔ごとに数条のボー線条がみられることがあります。
ボー線条も初期は異常角化のために白い横線条として現れます。これはミーズ線条(Mees line)と呼ばれMeesが砒素で自殺をはかった人にみられたのを報告したのにちなんでそう呼ばれますが、ボー線条と同様に様々な疾患の後にみられます。あるいはshoreline nailとも呼ばれます。
爪の発育停止が1~2週間続くと横溝は深くなって爪甲脱落症(onychomadesis)が生じます。
ボー線条の原因は枚挙にいとまがないほどに多いですが、大きく先天性、全身性の疾患、皮膚疾患、薬剤、物理、化学的な爪へのダメージ、などに分けられるようです。
多くは重篤な疾患の後などで、比較的原因は推定できますが、中には手足口病の後や、薬剤など本人が全く関連を意識していない場合もあります。また高山への登山、潜水夫などにもみられたとの報告もあるそうです。

参考文献

東 禹彦: 爪 基礎から臨床まで. 金原出版 第1版第7刷 2013

David A.R. de Berker and Robert Baran: Science of the Nail Apparatus. Baran and Dawber’s Diseases of the Nails and their Management, Fourth Edition. Edited by Robert Baran, David A.R.de Berker, Mark Holzberg and Luc Thomas.2012 John Wiley and Sons,Ltd. p1-50

Adam I. Rubin and Robert Baran: Physical Signs. Baran and Dawber’s Diseases of the Nails and their Management, Fourth Edition. Edited by Robert Baran, David A.R.de Berker, Mark Holzberg and Luc Thomas.2012 John Wiley and Sons,Ltd. p51-99

Mark Holzberg:The Nail in Systemic Disease. Baran and Dawber’s Diseases of the Nails and their Management, Fourth Edition. Edited by Robert Baran, David A.R.de Berker, Mark Holzberg and Luc Thomas.2012 John Wiley and Sons,Ltd. p316-362

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