菌状息肉症・病期分類など

菌状息肉症(Mycosis fungoides: MF)・セザリー症候群(Sezary syndrome: SS)の多くは斑状病変から始まり、局面、結節/腫瘤へと進行し、また早期からでもリンパ節病変や血液中病変を生じることもあります。一方他の皮膚リンパ腫では皮膚外病変を有さないのが原則です。そのためMF/SSに対しては独自のTNM分類体系が作成されています。

<皮膚病変>
班(patch): 隆起や浸潤を伴わない皮膚病変で大きさは問わない.
局面(plaque): 隆起または浸潤を伴う皮膚病変で大きさは問わない.
腫瘤(tumor): 径が≧1㎝で深達性の浸潤または垂直方向への増殖を示す充実性・結節性病変(局面でも潰瘍を形成することがあるため潰瘍のみでは皮膚腫瘍とはしない).
紅皮症(erythroderma): 体表面積の≧80%を占める融合性紅斑.
T1: 体表面積の<10% T1a(紅斑のみ) T1b(局面±紅斑).
T2: 体表面積≧10% T2a(紅斑のみ) T2b(局面±紅斑).
T3: 腫瘍形成 1病変またはそれ以上.
T4: 紅皮症 体表面積の80%以上.

<リンパ節病変>
臨床的に異常のないリンパ節は触診のみで可であるが、異常なリンパ節は可能な限り生検して組織学的評価を行う.
N0: 臨床的異常リンパ節なし 生検不要.
N1: 臨床的に異常リンパ節あり 組織学的にDutch Gr1またはNCL LN0-2に相当.
N1a クローン増殖なし N1b クローン増殖あり.
N2: 臨床的に異常リンパ節あり 組織学的にDutch Gr2またはNCL LN3に相当.
N1a クローン増殖なし N1b クローン増殖あり
N3:臨床的に異常リンパ節あり 組織学的にDutch Gr3-4またはNCL LN4に相当.
Nx: 臨床的に異常リンパ節あるが、組織学的確認なし.

<内臓病変>
M0: 内臓病変なし
M1: 内臓病変あり

<末梢血>
B0: 異型リンパ球が末梢血リンパ球の5%以下
B1: 異型リンパ球が末梢血リンパ球の5%を超えるが、B2基準を満たさない
B2: クローン陽性で下記の1つを満たす: 1)2)3)のいずれかを満たせばセザリー細胞と判断する
1)セザリー細胞≧1000個/μL
2)CD4/CD8≧10 形態的にセザリー細胞と判断できない場合にはフローサイトメトリー
3)CD4+CD7-≧40%またはCD4+CD26-≧30%

【病期分類に必要と推奨される検査(ISCL/EORTC)】
皮膚生検: CD2,3,4,5,7,8,20,30の免疫染色。TCR遺伝子再構成の検出
血液検査: 一般血液検査、TCR遺伝子再構成の検出、皮膚で検出されるクローンとの関連の確認
セザリー細胞の絶対数計測またはフローサイトメトリーによる異型リンパ球の解析
放射線検査: 胸部X線、 超音波、CT, FDG-PET,MRI
リンパ節生検: 長径15㎜以上、硬い、不整形、癒合、可動性のないリンパ節 光顕、フローサイトメトリー、TCR再構成
骨髄検査: B2所見、解釈しがたい血液異常所見のあるとき

【MF・SSのTNM分類に基づく病期】
Stage_______ T__________N__________M ___________B
IA__________1 __________0 __________0 __________0.1
IB _________2__________ 0__________ 0___________ 0.1
IIA ________1.2________ 1.2________ 0___________ 0.1
IIB ________3__________ 0.2________ 0___________ 0.1
IIIA _______4__________ 0.2________ 0___________ 0
IIIB _______4__________ 0.2________ 0___________ 1
IVA1_______ 1.4________ 0.2________ 0___________ 2
IVA2_______ 1.4________ 3__________ 0___________ 0.2
IVB ________1.4________ 0.3________ 1___________ 0.2

StageIA~IIAは紅斑期、扁平浸潤期(早期)に相当し、StageIIB以上は腫瘍期(進行期)に相当します。

【MF・SSの予後】
一般的に腫瘍期であるStage IIB以降から5年生存率は悪くなり進行期と呼ばれます。特にIVA2,IVBの5年生存率は40%以下になります。一方IAでは90%近くあります。わが国でのTNMB分類では諸外国と比較してIIIA(リンパ節病変のない紅皮症型NF)の予後がよく、諸外国との開きがあります。stage 分病期以外の予後不良因子としては、高齢発症、血清LDH値上昇、大細胞転化が進行期における予後不良因子といわれます。
大細胞転化(large cell transformation: LCT)とは進行期以降のMFの予後悪化因子で、小リンパ球の4倍以上の大型リンパ球が浸潤細胞の25%以上にみられるか、顕微鏡的に小結節状に増殖している状態をいいます。但し、MFにリンパ腫様丘疹症を伴った場合もLCTが認められ、むしろこの場合は予後良好のサインですので見誤らないことが重要です。

参考文献

日本皮膚科学会ガイドライン
皮膚リンパ腫診療ガイドライン2020 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン改訂委員会 皮膚リンパ腫診療ガイドライングループ
委員長 菅谷 誠 日皮会誌 130(6),1347-1423.2020 (令和2)

標準皮膚科学 第11版 監修 岩月啓氏 編集 照井 正・石河 晃 医学書院 東京 2020
戸倉新樹 第23章 D 悪性リンパ腫とその類症 ①皮膚T細胞・NK細胞リンパ腫 pp382-391

皮膚科臨床アセット 13 皮膚のリンパ腫 最新分類に基づく診療ガイド 総編集◎古江増隆 専門編集◎岩月啓氏 中山書店 東京 2012
濱田利久 17。 皮膚リンパ腫の予後 pp78-81

JDA eSchool eLecture特別講座
岩月啓氏 皮膚T細胞リンパ腫の病型と診断