爪及び爪囲の線維性の腫瘍にも様々なものがあります。
◇多くのものに対して最近は後天性爪囲角化線維腫(acquired periungual fibrokeratoma: APF)という名称が使われているようです。 その形状は腫瘍ができる部位によって大きく変わってきます。それで、安木は4つのタイプに分類しています。すなわち、a.後爪郭部腹面より生じたもの b.爪母より生じたもの c.爪床より生じたもの d.爪周囲に生じたもの、の4型です。 a.型では爪に縦溝を作ります. b.型では爪甲を上下に2分します. c.型では爪甲を挙上します. d.型では爪には変形は与えません. 多くのものでは、線維腫の成因として、外傷や感染が関与しているとのことです。これらによって線維芽細胞が膠原線維を新たに作ります。線維腫と角化線維腫には移行があり、角化は二次的な表皮肥厚によるのもと考えられています。 結節性硬化症という遺伝性の病気がありますが、その約半数で、爪囲に線維腫が生じてきます。これをKoenen腫瘍といい、診断の重要な所見となります。
◇結節性硬化症(Pringle病) 常染色体優性遺伝病。顔面の血管線維腫、知能障害、痙攣発作が3主徴です。皮膚の所見として葉様(木の葉様)白斑、粒起革様皮膚、Koenen腫瘍などが特徴といわれています。Koenen腫瘍も顔と同様に血管線維腫ですが、APFとして扱われています。
◇小児指線維腫症(infantile digital fibromatosis) 乳幼児の指趾に生じる稀な線維性腫瘍で、腫瘍細胞内に好酸性封入体を生じることが特徴です。 生下時または生後1年以内に生じますが、多くは3歳頃までに自然に消失していきますので、経過をみるのが一番良いとされます。 腫瘍が大きく運動障害などをきたせば切除、植皮術を行います。 第1指には生じず、2~5指趾背面に生じます。1cm内外の紅~褐色の半球状の腫瘤で、硬く光沢があります。筋線維芽細胞の増殖によるとされています。
参考文献
東 禹彦:13 爪および爪周囲組織の腫瘍. 爪 基礎から臨床まで 金原出版 第7刷 p176-193, 2013
Luc Thomas, et al. Tumors of the Nail Apparatus and adjacent Tissues. Baran & Dawber’s Diseases of the Nails and their Management, 4th ed. Edited by Robert Baran, David A.R. de Berker, Mark Holzberg and Luc Thomas. John Wiley & Sons, Ltd. p 637-743, 2012
守田英治先生 提供