植物によるかぶれ

このところ、植物によるかぶれ(接触皮膚炎)に興味を持ち、調べています。 ホームページに植物による接触皮膚炎としてまとめました。 うるし・ハゼノキかぶれのように一見して原因のわかるものもあれば、へーと驚くようなものもあります。アトランダムに書き綴ってみます。 ▲うるし、ハゼノキ、ギンナンのかぶれは有名で、誰でも知っています。しかし、うるし、マンゴー、ギンナンが相互に交叉過敏性を持っていて、一つにかぶれる人はこれら全てにかぶれ易いことは意外と知られていません。ましてやカシューナッツと交叉過敏性があることは知っている人は稀でしょう。食べるカシューナッツはローストしてあるために、かぶれないそうです。しかし、カシューナッツが原因であったサンダル靴皮膚炎の報告もあります。なんと、カシューナッツが皮革の風合いを出すために仕上げ塗料として使われるケースもあるとのことです。 うるしは完全に乾燥して、硬い樹脂状になったものはかぶれないそうですが、新しいもの(塗って2年以内のもの)は要注意だそうです。塗り箸など多いですが、書類の綴じ紐という意外な報告もありました。 ▲プリムラ・オブコニカはトキワザクラとも呼ばれ、ピンクがかったきれいな花ですが非常にかぶれ易いです。そんな花はもっていません、といわれ写真をみせると「それならある」といわれることもしばしばです。 ▲菊もかぶれ易い植物ですが、特徴なのは顔・手など露光部に出やすく、光線過敏症やアトピー性皮膚炎とまぎらわしい臨床像をとりますし、なかなか診断が難しい皮膚炎です。花屋や葬儀屋など普段菊を扱う人に多く、職業性接触皮膚炎の原因物質の一つとして、最近のジャパニーズスタンダードアレルゲンに菊アレルゲン(sesquiterpene lactone mix)が追加されました。結構日本人にも多いそうですが、欧米よりも症状が軽いことが多いそうです。これは日本人は普段から菊を食用としていて、知らず知らずのうちに減感作療法を行っているからとの説もあります。昔から漆職人は筆につけた漆を少量ずつ舐めていたといいます。これも経験的に減感作療法を行っていたものでしょう。 ▲木材でもかぶれることがあります。かつて、学生実習でブラジリアン・ローズウッドを扱い、木屑で多形紅斑様の重症のかぶれを起こした学生が大学病院を受診した事がありました。数名の学生がかぶれを起こしていました。アンデスのたて笛、ケーナでかぶれた報告もあります。tropical woodの一種パープルウッドを素材にしていたものでした。ハゼノキ以外でもかぶれる木材があります。 ▲プロポリスはミツバチが産生する樹脂状の物質ですが、産地によって内容に差があるそうです。北半球のものは樹脂成分が多く、南米のものは花粉殻が多いそうです。日本のものはコールタール・アスファルトなども混入していることもあるそうです。プロポリスは古来その殺菌作用、抗酸化作用などから民間薬として活用されてきましたが、使用頻度の多さと比例するようにかぶれも増えているようです。 ▲アロマテラピーの人気とともにエッセンシャル・オイルによるかぶれも増えているそうです。この10年ラベンダー・オイルのパッチテストの陽性率は増加しています。皮膚科でよく用いられるオリーブ・オイルによるかぶれの報告もありました。精油のかぶれにも注意が必要です。 ▲レモンなどの柑橘類は時に女性の顔のパックにも利用されるようですが、これらはフロクマリンを含んでいます。植物としてクワ類(いちじく)、ミカン科(ベルガモット、レモン、オレンジ、ライム)セリ科(パセリ、セロリ)などは各種フロクマリン(ソラレン、8-MOP,5-MOP)を含み植物性光線皮膚炎の原因になります。ソラレンは白斑に色素をつける紫外線治療法の薬剤です。すなわちしみ・色素を人工的に増やす物質です。ベルロック皮膚炎という言葉がありますが、香水、オーデコロンをつけて日光に当たると皮膚炎、しみを起こすものですが、これは中に含まれるベルガモット油中のベルガプテン(5-MOP)などの光毒性によります。(ベルロックとはペンダントの意味で液体が下方に流れた形を示したものです。) ▲ラテックスとは天然ゴムの木の樹液を意味し、これから天然ゴムが作られます。ラテックスアレルギーは天然ゴム製品による即時型のアレルギーのことで、接触じんましんを生じます。接触皮膚炎のⅣ型アレルギーとは機序が異なりますが、アナフィラキシ―ショックを起こすこともあり要注意です。ラテックスには多種のたんぱく質が含まれており、約半数に果物アレルギーを生じます。その他、花粉、野菜、薬草などにも共通抗原を有しておりラテックス・フルーツ症候群と呼ばれます。これらは進化の過程で突然変異を受けることなく多くの種に保存されてきた生体防御たんぱく質が共通抗原として交叉反応を起こすとされています。ゴム手袋を頻用する医療従事者、美容師、アトピーの人に多いとされます。  天然のもの、自然食品などは人工物でないだけに安全と思いこみがちですが、かぶれやアナフィラキシ―などのアレルギーを起こすことも知って普段の生活の上で注意する植物を知っておくことは重要かと思います。

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