耳の腫瘤

耳にできるしこり(皮下腫瘤、結節)で、粉瘤と紛らわしい疾患もいくつかあります。それらのいくつかを挙げてみます。
1)(先天性)耳瘻孔
耳の前に瘻孔がみられるものをいいます。耳は胎生期に耳介が形成される際に複数のパーツが合わさって出来上がります。この合体が不完全だと隙間(瘻孔)ができます。通常は耳の前方にできます。匂いのある分泌物を排出するだけのことも多く、そのままでも構いませんが、感染を起こして赤く腫れ、痛みを伴う場合もあります。
治療は抗生剤の内服で軽快する場合もあります。何回も繰り返す場合は手術療法を行います。通常は耳軟骨手前で終わっていますが、時に軟骨を貫く場合があります。瘻管の走行を確認しながら摘出しますが、取り残すと再発します。従って慣れた形成外科、耳鼻科などでの手術が勧められます(小児では全身麻酔、成人では局所麻酔)。
2)耳介僞嚢腫
耳介軟骨内に透明な黄色の漿液(軟骨由来の漿液様粘液)が貯留して嚢腫様の外観を呈しますが、粉瘤と異なり、袋に裏打ちされた上皮細胞層はありません。男性に多くヘルメット等の機械的刺激や外傷が関与する可能性がありますが、特別な要因のないこともあります。耳介上半部に波動を触れる嚢腫様の結節を呈します。注射針等で穿刺すると漿液が吸引され、平坦化しますが、そのままではまた溜まってきます。切除などの手術療法も行われますが、ステロイド薬の局注(トリアムシノロン懸濁液の軟骨内局注)が奏功するとされます。
3)ピアスケロイド
耳にピアスの孔を開けると、ピアス軸でホールに傷をつけ易くなります。また金属アレルギーなどでかぶれるとじくじくしてきてさらに傷つけやすくなります。傷は修復しようとして孔は塞がってきます。無理をしてピアスを通していると皮膚の中に皮膚、表皮成分が捲れこんでくることがあります。そこに粉瘤ができることがあります。いわゆる外傷性粉瘤です。ときに傷の修復過程で肉芽腫や瘢痕、ケロイドを形成することがあります。ケロイドは体質もありますので、厄介です。経験のある形成外科医などに相談するのがよいかと思います。

上記以外にも、一見粉瘤に似た疾患は数多くあります。特に耳の周辺は神経、血管、耳下腺などが錯綜していますので、慎重な対応が必要です。
4)副耳
5)apocrine hydrocystoma
6)耳下腺腫瘍
7)angiolymphoid hyperplasia with eosinophilia
8)木村病
などなど
またここに列記した以外の腫瘍(良性、悪性)、炎症性疾患は数多くあります。

参考文献
耳の皮膚疾患 責任編集・著 大原 國章 Visual Dermatology Vol.12 No8 2013