形からみて、スプーンネイル(spoon nail, koilonychia)とも呼ばれます。丁度ばち状指と反対の状態です。親指が一番多く、次いで親趾です。ただし生後数年は親趾では正常でもみられる現象です(5%程度)。1~3指に多くみられます。
スプーンネイルは鉄欠乏性貧血や、Plummer-Vinson症候群でみられることが知られていて、医学関係者には有名です。しかし、このことは過大評価された知識のようです。むしろ、実際は局所の刺激、その他様々な疾患に伴っておきてきます。抵色素性貧血によって生じる爪の変化はむしろ爪甲の層状分裂と、蒼白化であるといいます(東による)。
また先天的例や、人種差もあるようで、チベットでは多くみられるそうです。高度と爪甲の成長遅延が関係しているとも考えられています。
乾癬や爪眞菌症でも起こることがあります。また消化器系の癌によっても生じたとの報告があります。鉄だけではなく、蛋白質などの吸収障害が影響したものと考えられています。またアミノ酸の中の硫黄濃度の低下が原因とする報告もあります。
局所では化学的な要因として有機溶剤、美容師が使う種々の薬剤などでも生じえます。爪は一般的に菲薄化します。
一方、物理的な要因としては指趾先に力がかかる仕事に従事している人に生じます。アフリカの人力車の車夫の足趾に生じた例の報告があります。また常に重いものを持ち運ぶ人にも生じます。この際は爪は薄くはならず、むしろ全体に厚くなりつつ反り返る傾向があります。
子どもの場合は、裸足で歩いたり、きつい靴を履くことも関係しているとのことです。
参考文献
東 禹彦: 爪 基礎から臨床まで. 金原出版 第1版第7刷 2013
Mark Holzberg:The Nail in Systemic Disease. Baran and Dawber’s Diseases of the Nails and their Management, Fourth Edition. Edited by Robert Baran, David A.R.de Berker, Mark Holzberg and Luc Thomas.2012 John Wiley and Sons,Ltd. p316-362