爪甲剥離症

爪甲剥離症とは、爪甲が爪床部から離れ、爪先端から根元のほうに向かって進行する状態のことです。爪甲剥離症には狭義の意味合いと、広義の意味合いが含まれています。
狭義とは爪の剥離のみを認め、爪甲には変形がなく、爪甲下の角質増殖もない状態です。
広義とは爪甲の剥離がみられれば、爪変形や角質増殖など他の変化があってもよいとするものです。例えば乾癬に伴った爪変化ではこれらの変化があわせて見られる場合もあります。一般的には狭義のものを爪甲剥離症と呼びます。
一般的に剥離した部分は白色~灰白色にみえますが、それは剥がれた部分に空気の層ができ、光の屈折率によるものです。ただし、二次的にカンジダ菌、緑膿菌の感染やごみなどの影響で茶色、緑色などを呈する場合もあります。
【原因】
全身性の疾患に伴うもの、局所性の原因によるもの、皮膚疾患に伴って生じるもの、薬剤性のものなどがあります。また上記のいずれの要因もみられず、原因のよくわからない特発性の場合もあします。まれに先天性に生じるケースもあります。
1)全身性の疾患に伴うもの
・甲状腺機能異常で爪甲は軟らかくなり、剥離し易くなるそうです。(亢進、低下共に)
・エリテマトーデスなどの膠原病による報告もあります。
・鉄欠乏性貧血による匙状爪(スプーンネイル)からの剥離.
・心肺疾患によるもの
・ポルフィリン症、ペラグラに伴うもの、(光線性の誘因?)
・梅毒
などなど
2)局所の要因
《外傷》
職業性に指先をよく使う人、(海外では毛皮職人、精肉業、屠殺業者など)、ゴム手を使う主婦など
《接触皮膚炎》
さまざまな刺激性の皮膚炎やアレルギー性の皮膚炎の報告があります。
消毒液の次亜塩素酸ナトリウム、洗浄剤のフッ化水素酸(これは骨まで到達する激しい皮膚炎を起こします。過去ブログ参照(2012.3.17)。マニキュア製品、エポキシ樹脂など。
《微生物感染》
カンジダ菌・・・局所の要因にカンジダ菌の感染を伴うケースがもっとも多いそうです。
剥離部分が水仕事などで年中湿っているとカンジダ菌が増殖してきます。そうするとさらに剥離は進行します。またよごれを取り除こうとして先の尖ったものや紙などで爪下を掃除することもさらに悪化原因となります。
頻度は少ないものの、白癬菌や癜風菌によるものも報告されています。
《皮膚疾患によるもの》
尋常性乾癬(後にまとめます)、扁平苔癬、接触皮膚炎、天疱瘡、皮膚腫瘍、多汗症などによるものなどがあります。
《薬剤性のもの》
種々の薬剤が原因となっています。
・最も有名なものはテトラサイクリン系統の抗生剤です。ドキシサイクリンが多いですが、ミノマイシンでも起こります。(薬剤誘発性光爪甲剥離症)オクソラレン。
・抗がん剤・・・ブレオマイシン、5-FU,
・レチノイド
・経口避妊薬
その他にも報告例は種々あります。
《先天性のもの》
種々報告例がありますが、省略します。
【治療】
治療は原因をみいだして、それの治療を行うことが原則です。
上記の各要因を問診し、該当項目があればその対処をします。
局所的には剥離した爪甲はできるだけ除去し、清潔にして、乾燥させます。硬いブラシでごしごしこすってはいけません。なるべく軟らかいもので優しく洗います。
鏡検でカンジダ菌がみつかれば抗真菌剤を使用します。みつからなければステロイド剤の外用が効果的な場合もあります。いずれにしても湿ったままが一番よくありません。

参考文献

東 禹彦: 爪 基礎から臨床まで 金原出版 第1版 第7刷 2013

Adam I Rubin and Robert Baran: Physical Signs. Baran & Dawber’s Diseases of the Nails and their Management,4th ed. Edited by Robert Baran, David A.R. de Berker, Mark Holzberg and Luc Thomas. 2012 John Wiley & Sons. p72-75

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