中原寺メール4/17

【前住職閑話】~ダライ・ラマ法王の手は柔らかい~

昨日はチベット仏教の最高指導者でノーベル平和賞のダライ・ラマ法王とごく間近に接する機会をいただきました。

港区芝にあるグランドホテルで曹洞宗教誨師連合会結成50周年があり、ダライ・ラマ法王の記念講演がありました。来賓として招かれた私の席が法王とわずか4メートルほどの近い障害物のない距離で話を聞くことができたことは幸運であり、終わって降壇されたときに法王の差しのべた手を握れたのは感激でした。慈悲の実践者にふさわしい柔らかい手でありました。

法王は世界各地を巡り、平和・非暴力・異なる宗教間の調和・地球規模での責任感・仏教の慈悲を伝えるメッセージを発信し続けています。また科学者との対話にも力を入れ、さらに中国によるチベットの仏教が迫害されている歴史の中で、法王の徹底した慈悲心の考えや行動に欧米では多くの人びとが関心をもって法王のもとに集まってくるそうです。

話の中で特に印象に残ったのは、常に70億人の一人であること。わが心の持ち方が怒りや敵を作る。因果の道理を知らない無智が平安(さとり)を妨げる。もろもろの事象には実体(それ自身によって存在するもの)がないので執われを持ってはならないこと、などでした。

しかしこれらの言葉の説く一つ一つは、言葉によって伝わるのではなく、語り手のすべてを包み込む柔和な人格によるものだと深く感じました。

よき人に出会い、よき言葉に出会った、仕合わせな恵みのひと時でした。