ボウルダー、ロッキー山脈へ

ホテルのコンシェルジェにいろいろと情報を教えてもらったものの、やはりロッキーマウンテンに行きたい気持ちには抗えませんでした。
翌朝は早朝に起きると、ボウルダー行きのバスにとび乗りました。たったの5ドルです。そこはロッキーマウンテン国立公園までの途中の町です。そこまで行けば何とかなるのではないか、と思いました。レンタカーがあるかもしれない、そこからシャトルバスやツアーがでているかもしれないという何とも虫のいい、何の裏づけもない甘い期待がありました。
バスは大平原の中をひた走ります。名前の判らない白っぽい樹木がぱらぱらとみえます。
多分、2百年足らずの昔はネイティブアメリカンが昔ながらの生活を送っていたところなのでしょう。デンバーの空港にはターミナルの通路にアメリカン・インディアンの写真が何枚も掲げてありました。この地では、彼らの滅びの歴史悲話があります。しかしながらそのことももう今では知るよすがもありません。
はるか遠くにロッキーマウンテンが見えますが、近くには山らしいものも見えないためにここがマイルハイシティーである高地であることも忘れてしまいそうです。
小1地時間でボウルダーのバスターミナルに着きました。途中所々で学生らしい若者が下車していきました。自転車もバスの荷物置き場に載せてくれていました。
ボウルダーはロハス発祥の地といわれ、静かで綺麗な街でした。まだ朝早いせいか人のでも少なく、たまたま開いていた雑貨店に入りました。何かアジア人の主人でした。3年前にネパールから移住してきたとのことでした。マップと山の情報を知りたいというと街のメインストリートの方を指し示してくれました。パールストリートは人もまばらですが、静かなきれいなところでした。観光案内所にしばらくすると職員が来ましたのでロッキー山脈の公園の入り口のエステスパークまで行きたいというとタクシー以外はないといいます。近くのホテルにいけばシャトルがあるかもしれないというので行ってみました。
ホテルフロントのお嬢さんは親切で、エステスパークまではシャトルはなく、タクシーしかないけれど、ここからバスでNederlandというところまでいけばそこはとても景色のいいところでロッキーマウンテンも見えるといいます。そこで散歩するのもいい、と2つのオプションを示してくれました。どちらを薦めるかと聞くと、バスなら5ドルだし、Nederlandがお薦め、ということでした。確かに1,2万円も払って公園に行くよりはよさそうな気がしてきました。それでバスに乗りました。バスは山道を辿り、次第に高度を上げ、渓谷の様相を呈してきて周辺には雪も見えるようになってきました。
かなり期待がもてそうです。ところが、Nederlandのバス停で下車すると、遠くにロッキーマウンテンは見えますが、辺りはだだっ広い丘状で、別荘様のシャレーが点在するだけの寒村で何もありません。確かに綺麗な景色に間違いはないけれど、勝手に想像していた上高地やシャモニーの景色とは似ても似つかぬところでした。しばらく歩き回ってまた帰りのバスに乗ってボウルダーに戻ってきました。午後からEstes Parkまでタクシーで行くか思案しましたが、どうせ遥か遠くに山を見るだけだと却って欲求不満になるだけだと思い断念しました。
このままデンバーに帰るのももったいないので、しばらくボウルダーの街を散策することにしました。街のマップを片手に適当に歩くことにしました。
街を貫くWalnut streetという通りを歩いてみました。時折、散歩する人とすれ違いましたが会釈すると笑顔で挨拶が返ってきます。ジョギングする人、サイクリングする人もみられますが、人影はまばらで静かな街でした。住宅の路地から車がでてきて、こちらが止まっていると決まって先にいけ、というように合図して止まって待っていてくれます。たかが一人の旅行者のために却って恐縮していまいます。地図を見ながらどちらに行こうか思案しているとご婦人が何か手助けが必要かと近づいてきます。道を教わって歩いていくと更にまた大丈夫かと念を押すように道順を教えてくれました。
時間がゆっくりと流れていくような心地よい雰囲気の街でした。これがロハスとは直に結びつきはしないでしょうが、人に優しい生き方の実践のようにも思われました。
ただ、行けども行けども平屋の住宅で、ビルや商店やましてや飲み屋などは出てきません。コロラド大学の分校、高地トレーニングスポーツセンターなどの施設にも行き着けずまた別のストリートを戻ってきました。
ボウルダーのダウンタウンのパールストリートモールには看板があって、犬やその他の動物、バイクやスケボー、フリスビーなど禁止と、かなり厳格な規制が掲げてありましたが、これも人に優しい生き方を目指すためのものなのでしょう。アメリカで「最も健康的な町」といわれるのもむべなるかな、といった感じでした。
小生も自然が好きで山に憧れ、野山にわけいりますが、一方でしばらくすると無性に街の猥雑な雑踏が恋しくなったりします。あまりに健康的で、優良なこの町の環境ではかえって息苦しくなるかな、とも思いました。
今回の旅は当初はコロラドスプリングスからPikes peak(4300m)、Garden of the Godsなどへのドライブを考えていました。天気が悪く泥縄的にバスを乗りついでボウルダーに来ましたが、いかにも準備不足で行き当たりばったりの旅行でした。
ボウルダーなど本当はしばらく住んでみてロハス的な生き方が垣間見れることでしょう。残念だけどもうこの地には来ることもないかもしれないと思いながらバスに乗り込みデンバーへと帰っていきました。
b3デンバーからボウルダーへ
b4デンバーからボウルダーへ
b1ボウルダーの看板
b2
b5ボウルダーからNederlandへ
b7Nederland