丹毒

真皮の浅層を主座とするA群β溶連菌による感染症です。一部には黄色ブドウ球菌、肺炎球菌が起因菌になることもあります。
顔面・四肢特に下腿が好発部位です。
特別な傷、誘因がなくても、あるいは軽微な傷から細菌が皮膚に侵入し突然悪寒・発熱・頭痛などを伴って発症します。
主として顔面の片側性に(時には両側性に)、下腿に境界明瞭な潮紅、腫脹、浮腫性紅斑を生じます。表面は緊張して光沢があり、浸潤を触れ、局所の熱感、圧痛があります。急速に拡大して時には表面に水疱を生じます。発熱・倦怠感・頭痛などの他にめまいや悪心・嘔吐を伴うこともあります。全身性には高齢者、幼児、免疫抑制状態(ステロイド投与、糖尿病、全身衰弱など)、局所的にはリンパ管うっ滞(リンパ節廓清など)、静脈瘤、扁桃炎、副鼻腔炎、齲歯などの病巣感染などがあると再発を繰り返しやすくなります(習慣性丹毒)。また時に溶連菌感染後の腎炎を併発することもありますので、検尿などの経過観察は必要です。血液検査で白血球数の増加、赤沈の亢進、CRPの上昇、ASO価の上昇などが診断、病勢の参考になりますが、超音波によるエコー検査は病巣の主座を確認するのに有用とされます。深部の感染症、病巣感染を疑う場合はCT,MRIなどの画像検査を行います。
治療はA群溶連菌をターゲットとして、ペニシリン系の抗生剤(サワシリン、ビクシリンなど)を投与します。再発を避けるため十分な期間(10日~2週間程度)使用します。重症の場合は入院のうえ、点滴静注を行います。数日投与でも反応が悪ければ、黄色ブ菌なども考慮して第一世代セフェム系などを使用します。
蜂窩織炎はより真皮深層の細菌感染症ですが、丹毒との境界、鑑別は難しく一連のスペクトラムの疾患です。ただ病巣が深くなるに従って紅斑の境界は不明瞭になり、光沢を伴った紅斑も鮮明ではなくなる傾向にあります。