蜂窩織炎

蜂巣炎ともよびます。
真皮深層から皮下脂肪織を病変の主座とする急性びまん性深在性の細菌感染症です。起因菌は化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌が主ですが、その他の菌が原因となる場合もあります。
四肢、特に下腿が好発部位ですが、顔面、頚部、臀部などにも生じます。足白癬、湿疹などのわずかな傷、亀裂、切り傷、刺し傷、皮膚付属器などの他の皮膚感染症からの波及が誘因となります。狭義には真皮深層から皮下脂肪織のブドウ球菌、化膿レンサ球菌などを起因菌とするものを指しますが、広義には骨髄炎など深部感染症に続発するもの、丹毒なども含まれることもあります。また壊死性筋膜炎は同じスペクトラムに入る皮膚・軟部組織感染症ですが、極めて重症な全身細菌感染症であり、時に鑑別が困難なことがあり、この見極めは臨床上極めて重要です。
突然局所に発赤、腫脹、熱感、疼痛が出現し、浮腫を伴った潮紅は急速に拡大していきます。丹毒と比べると境界は不明瞭です。時に皮下膿瘍を伴うこともあります。発熱、頭痛、倦怠感などの全身症状を伴います。通常は関節部などの障壁で進行は止まります。ただ、皮膚の発赤に比べて激烈な痛み、著明な全身症状(高熱、血圧低下、過呼吸などの呼吸障害)を呈するとき、または逆に局所の水疱、血疱、壊死などがみられる場合は壊死性筋膜炎を疑い、迅速な対応が必要となります。
エコー、CT,MRIなどの画像診断が有用ですが、簡易的に見分けるLRINEC score(laboratory risk indicator for necrotizing fasciitis) scoreの有用性が報告されています。
項目……….検査価………. スコア
CRP………. ≧15mg/dl………. 4
WBC………. ≧15,000/μl……….1
…………. ≧25,000/μl……….1
Hb……….. <13.5g/dl…………1
Hb……….. <11g/dl…………..2
血清Na…….. <135mEq/l………..2
血清Ca…….. >1.58mg/dl……….2
血糖………. >180mg/dl………..1
low risk: <5 ………. intermediate risk 6~7 ………. high risk >8

但し、これは陰性的中率は高いものの(97.8%)陽性的中率は低い(15.4%)との報告(盛山吉弘 臨床皮膚科 69:163-167,2015)もありますし、有用性に批判的な意見もありますのであくまでも病院紹介などへの参考に留めるべきかもしれません。
【鑑別】
急性期に鑑別すべき疾患は上記の壊死性筋膜炎ですが、それ以外に深在性皮膚真菌症、皮膚抗酸菌症、深部感染症からの波及、接触皮膚炎、虫刺、膠原病、好酸球性筋膜炎、硬結性紅斑、血管炎、皮膚リンパ腫など多岐に亘ります。
【治療】
軽症か重症によって変わってきますが、まず安静、患部の冷却の上、下肢なら挙上を指示します。そのうえで黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌を念頭に抗生剤の治療を開始します。数日でも反応の悪い場合は診断、治療の再検討が必要になってきます。
血液培養では検出率が低く、局所の細菌培養ではコンタミネーションが多いとの報告があります。従って一般的に当初は第一世代セフェム系の抗菌剤が用いられます。近年は世界的にはCA-MRSAの増加もいわれていますので注意を要します。