皮膚付属器腫瘍

あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、ここ数回書いてきた粉瘤、石灰化上皮腫なども分類上は付属器腫瘍に含まれます。
皮膚腫瘍の種類は目に見えるだけに、本当に多彩で、しかも良性から悪性まで数多くがあります。
いかにも悪そうで、拡大するものは患者さん自身も一般の皮膚科クリニックではなく、大きな専門病院を受診するかと思います。それでも現在の医療制度では直接大学病院、専門病院などは受診できません。まずは皮膚科クリニックを受診し、紹介という形をとるかと思います。
皮膚科専門医といえどもこれらの腫瘍の鑑別は難しく、専門病院での病理診断となるかと思います。その中でそのままで良いものか、或はすぐに手術などの対応が必要かは長年皮膚科医をやっていても難しいものがあります。”百聞は一見に如かず”の例えの如く全ての症例を経験すればよいのでしょうが、なかなかそうもいきません。
皮膚腫瘍は系統的に分類すれば、上皮組織系、支持組織系(結合織、骨、軟骨、血液、リンパ組織)、筋組織系、神経系、メラノサイト系、脈管系に分かれます。
上皮組織系では更に表皮組織系、付属器系に分けれらます。顔の疣状のものは多くはこの系かメラノサイト系になるかと思います。この中でも皮膚付属器系は複雑です。分化の方向から毛包、皮脂腺、エクリン汗腺、アポクリン汗腺に分けられ、分化の程度からは母斑、良性腫瘍に分けられ、更には悪性腫瘍もあります。
これらの鑑別はなかなか難しく、頻度、特徴によっては粉瘤、Fordyce状態、汗管腫などと一見して診断できるものもありますが、多くは見ただけでは分かりません。
前虎の門病院皮膚科の大原國章先生は皮膚腫瘍の大家で多くの書籍、講演、論文があります。その中の【大原アトラス2 皮膚付属器腫瘍 秀潤社】は豊富な症例と鮮明な臨床写真、ダーモスコピー、病理所見、手術所見などを簡潔にまとめてあり、診療の参考になります。著者も書いているように”絵合わせ診断”としても活用できます。
【大原アトラス3 皮膚悪性腫瘍】【皮膚疾患のクロノロジー】と合わせて皮膚科研修医にも専門医にもお勧めです。

皮膚腫瘍の事を書くつもりが最後は大原先生の本の勝手な宣伝になってしまいましたが、まずほとんどの皮膚科医が認める日本の皮膚腫瘍の大家でしょうから許されるでしょう。