石灰化上皮種(毛母腫)

20歳以下の若年者の顔、頚部、上肢に好発する硬い腫瘍です。骨様にゴツゴツし、碁石をはめ込んだような硬さと形容されます。やや女子に多く、単発性ですが、時には多発することや家族性のこともあります。多発例ではTurner症候群や筋緊張性ジストロフィーなども考慮する要があります。
通常指頭大で皮面より隆起し表面の皮膚は正常皮膚色を呈しますが、より大きくなることもあり、肩や上肢など物理的刺激を受けやすい部位では、血水疱を形成したり糜爛を生じることもあります。
従来言い習わされてきた石灰化上皮種という病名は、毛母への分化が強く見られるので最近は毛母腫と呼ばれます。
病理組織像は特徴的で境界明瞭で、細胞質が少なく核が濃染する好塩基性細胞(basophilic cell)と淡紅色で核が消失して明るく抜けてみえる陰影細胞(shadow cell)とからなります。両者の移行像があり、移行細胞(transitional cell)がみられます。前者は毛母細胞由来で後者は毛皮質由来と考えられています。古くなるにつれ、好塩基性細胞は少なく、明るくなっていきます。3/4では石灰沈着がみられます。臨床的には白い塊、粒として透見されます。また化骨をみることもあります。これは石灰化が高じて骨になるのではなく、間質の線維芽細胞の骨化とされます。
治療は切除術となります。