アタマジラミ症

頭部のフケ症の場合、注意しておかなければならないものの一つはアタマジラミ症でしょう。逆にフケなのに子供がシラミではないかと心配して受診される親御さんもいらっしゃいます。
フケかシラミかの鑑別は比較的に簡単です。両者とも1,2mm程度に白く髪の毛について見えるのですが、フケはhair castといって、髪の毛に鱗屑がついているだけですから、触ると簡単に脱落します。形も卵形ではなく、米糠様です。
これに対してシラミでは髪についているのは卵ですので、ルーペで見れば本当に虱の卵が毛髪にセメント物質でしっかりと固着しているのが観察できて指で摘んだだけではびくともしません。よく観察すると皮膚科医でなくともわかります。
シラミの場合は時に成虫が動いているのを見つけることもあります。成虫は2~4mmでメスの方がオスより大きく幼虫・成虫の雄、雌ともに吸血します。シラミには大きく分けてアタマジラミ、ケジラミ、コロモジラミがあります。アタマジラミは頭髪のみに、ケジラミは陰毛、腋毛、睫毛に寄生し、こちらの方は性感染症の要素を持ちますし、虫の形態も異なりますのでこの両者を混同しないとこが必要です。コロモジラミは形態上は頭ジラミと区別できませんが、衣服に寄生します。過去には多くありましたが、現代では路上生活者など特殊な環境、場合でしかみられません。
虱は直接の接触や衣類や布団の共用などで感染します。幼稚園、保育園などでは体を寄せあったり、頭部を密着したりして遊ぶことも多く、成虫は容易に乗り移り集団感染してしまいます。スイミングキャップ、櫛、タオルなどの共用でも感染しえます。

治療はフェノトリン製剤(スミスリンシャンプー、粉末など)で行います。卵には効きませんので、孵化する周期に合わせて(約10日で孵化、3回脱皮して、成虫は約1ヶ月の寿命)、3~4日間隔で2週間薬剤を使用します。同時に虫卵の除去を用手的や専用の梳き櫛で行うことも重要です。鋏で頭髪を切ることも有効です。以前はこれで治癒していましたが、最近では外国からフェノトリン耐性の虱が持ち込まれるようになりました。特に沖縄では耐性の虱の頻度が高くなってきていますので、物理的、機械的に除去するしかなくなってきています。諸外国ではイベルメクチンやベンジルアルコール、ジメチコンなどの殺虫剤が使用されていますが、日本ではまだ認可されておらず今後の問題となってくる可能性があります。

頭髪に付着したアタマジラミの卵

アタマジラミの卵 拡大 抜け殻となっても付着します

アタマジラミの成虫

アタマジラミの成虫

ケジラミの成虫 大きさは1mm程度でカニに似ているために別名カニジラミ(crab lice)とも呼ばれます。陰毛について性感染症を起こしますが、時に乳幼児、女性などの睫毛、稀に頭髪に付着することもあります。