好酸球性膿疱性毛包炎

京都大学 椛島先生のこの疾患についての総説がありましたので、その骨子をまとめてみました。
めったにしかお目にかからない疾患ですが、いろいろな意味で重要な位置を占める疾患だと思いますのでアップしてみました。

好酸球性膿疱性毛包炎(eosinophilic pustular folliculitis:EPF)は京都大学の太藤(おおふじ)重夫が1965年世界で初めて報告した疾患で(かつては太藤病とも呼ばれていた)、当初は日本人のみにみられる疾患と思われていましたが、諸外国からも報告されるようになりました。主に顔に好酸球性の膿疱が集簇して紅斑局面を形成します。痒みがあり、毛包一致性の丘疹や膿疱が集まって紅斑局面を作りますが、無菌性であり、体幹四肢、さらには毛包のない手掌、足底にも生じますので、毛包炎(folliculitis)はなく、好酸球性皮膚炎(皮膚症)(eosinophilic dermatosis)と呼称する場合もあります。その病理組織所見の特徴は、毛包漏斗部や脂腺周囲に多数の好酸球が浸潤して膿疱を形成する事です。また血中好酸球も高値を示すことがあります。当初は日本人をはじめ、東アジア人の報告が多かったのですが、1986年米国でエイズに伴う症例が報告され、これを契機に世界的にも注目を集めるようになりました。HIV関連型(HIV-associated)EPF。また小児にも同様な症例が相次いで報告され、小児型の亜型も認識されるようになりました。そして太藤らが報告したタイプは古典型と呼称されています。
古典型は顔面に好発し、紅斑が遠心性に拡がり、辺縁に膿疱ができやすく、中心治癒傾向を示し色素沈着となり易い傾向があります。
HIV関連型では、体幹部に浮腫性の紅斑局面、孤立性の紅色丘疹を作る傾向があります。また免疫不全を反映してニキビダニや真菌も見られます。その後エイズだけではなく、種々の疾患の免疫不全の患者にも同様の疾患がみられることにより、HIVだけではなく、免疫不全関連型とも呼ばれるようになりました。
小児型は稀であり、頭皮に多く好酸球浸潤が毛包漏斗部ではないなど非典型的であり、この型を否定する意見もあります。
治療で特徴的なことは、7〜8割の患者にCOX阻害薬であるインドメタシンの内服が奏功することです。その他にジアフェニルスルホン内服、ロキシスロマイシンなどが効く場合もあります。
この疾患の原因、病因については未だ不明です。しかしながら、無菌性の好酸球の浸潤があること、免疫不全関連EPPが示す様に何らかの免疫異常(Th2タイプのサイトカイン環境など)が関与していること、インドメタシンが奏功することからみて、その作用点のプロスタグランジン、シクロオキシゲナーゼ(COX)経路の異常が考えられています。
皮膚に好酸球が増える疾患は数多くありますが、それらでの好酸球の役割は未だよくわかってはいません。EPFの病態解明の研究は将来好酸球とプロスタグランジン経路のネットワーク、免疫系とのクロストークの研究の一助となることも期待されています。

出展

椛島 健治 現代に生きる好酸球性膿疱性毛包炎ーー太藤皮膚科学が教えるもの
Visual Dermatology Vol.12 No.5 2013
太藤皮膚科学の系譜 若手に伝えたい「2つの太藤病」の源流 責任編集 宮地 良樹