【住職閑話】~ご恩おもえば
一年の総決算と位置づけている「報恩講」が、例年通り昨日、一昨日と二日間にわたり勤め終えて、ほっと一息ついています。
お寺の使命とは何か?それは何といっても仏法を人びとに伝えることです。ですからあの人が参ってくれた、この人は参ってくれなかったとどうしても気になってしまいます。お寺を預かる僧侶の身として、仏さまの教えに遇って欲しいと思うがゆえに一喜一憂してしまうのでしょうか。
そうした中で、昨日の法要に参られた一人に、およそ1キロの道のりを杖にやっと支えられながらお出でになった90歳に近いおばあちゃんがいました。
普段の外出は介添えがないと無理なお体です。道路事情も悪い昨今です。本当に頭が下がります。
江戸時代の終わり頃、山口県下関の沖合いにある六連島(むつれじま)という小さな島に「お軽」という女性がいました。夫の浮気や様々な人生苦に遭いながらやがて尊い念仏者として慕われた妙好人です。
そのお軽さんが詠んだ有名な歌があります。
「重荷せおうて 山坂すれど ご恩(仏恩)おもえば 苦にならぬ」
お念仏をよろこぶ人は、磁石にくっついた針が近くの針を引き寄せ、数珠つなぎになるように、まわりの人をお念仏に引き寄せます。
この度のお参りの光景で、ひときわこのおばあちゃんの姿に胸うたれました。