しみ・しわ・レーザー

学会が終わりまたばたばたした日常に戻りました。盛り沢山の内容でしたが、今回はレーザーのセッションをいくつか覗いてみました。近年はレーザー機器がいろいろと出てきて話を聞いてみても混乱しそうです。専門の先生方でも意見が異なるものもあります。
仕入れた知識を一寸整理して、まとめてみました。
レーザーとはlight amplification by stimulated emission of radiationの頭文字をとった合成語で「放射電磁波の誘導放出による光の増幅」といった意味だそうですが、単色光の光を増幅してその光の熱エネルギーを治療に使ったものといえます。
代表的なレーザー
*炭酸ガスレーザー・・・光の高出力エネルギーで水分を含んだ組織に非特異的に吸収されて焼却するもので、老人性疣、ほくろなどを取るのに使われますが、瘢痕を残す恐れがあります。
*色素(ダイ)レーザー・・・・波長585nm,595nmで赤血球のヘモグロビンに吸収されるもので血管腫に使用されますが、血管の太さ、深さなどによって治療効果はまちまちとの事です。
*Qスイッチルビーレーザー・・・太田母斑や後天性真皮メラノーシス(ADM:acquired dermal melanocytosis)などに対するゴールデンスタンダード。 アレキサンドライト、ヤグレーザーも有効。
ここまでは、すでに確立されたというか、教科書的なものですが、発表された抄録をみると新たな機器が目白押しでした。その中で目についたものをいくつか。
*IPL(intense pulsed light)・・・レーザーではなく可視光線域の連続波長の光ですが、大雑把にいえばキセノンランプを強くフラッシュしたものと考えてよいそうです。カットオフフィルターの選択によって特定領域の光を照射できます。但し、効果はマイルドでダウンタイムが少なく日本人向けともいえますが、ある演者が述べていたように当初は「あれはインチキパルスレーザーだ、エステだ、産毛がとれるだけだ。」などと陰口をたたかれたそうです。しかし10年経っても生き延び、今やskin rejuvenation(若返り)のゴールデンスタンダードとなっているそうです。確かに映像をみると美白、肌つや、はりなど肌の質感の改善がみられました。施術後痂皮などのやけど様の症状を起こさす、すぐに化粧もでき日本人向けの機器だと思われます。熟練した医師ならかなりの部分のしみ、くすみ、赤ら顔に効果がありそうです。但し、フィルター、冷却装置など機器の進歩もさりながら効果は手技の巧拙にも大きく左右されそうです。
*レーザートーニング・・・QスイッチNd:YAG Laser メドライトC6。 以前のブログにも一寸書きましたが、肝斑に対してレーザーは原則禁忌ですが、この機器は1064nmの波長を均一に低出力照射することで、表皮基底層のメラニン色素を除去して炎症による色素増強を抑えながら症状を改善していくというものです。但し、これは根治術ではなくいずれ再発するものなので、使用に慎重な意見もありました。しかし、数年間軽快している例もあり、例え繰り返すことになるにしても、肝斑に悩み、ビタミンC,トランサミンが効果不十分な人には朗報かと感じました。
*フラクショナル炭酸ガスレーザー・・・炭酸ガスレーザーは最も早く導入され、リサーフェシング治療も試みられましたが、施術後の色素異常、瘢痕などの合併症が多く一般的にはなりませんでした。2007年にはフラクショナル炭酸ガスレーザーが導入され、若返り治療やにきびの瘢痕への治療が報告されてきています。これは、イメージとしては炭酸ガスレーザーを剣山のように細く多数真皮内に照射して結合織のリモデリングを促し瘢痕を少なくするといったもののようです。今回もアイスピックのように窪んだにきび痕への良好な効果が報告されました。しかし、専門家の中にはこの効果は一時的な真皮の浮腫によるもので早晩またもとに戻る、施術が先行して理論が確立していない、などとこれを危ぶむ声もありました。しかしにきび痕など根治術のない現在、有意義な方法かとも思いました。
*RF(radio frequency,ラジオ波)・・・光やレーザーと異なる選択性を持つため、メラニン(黒)やヘモグロビン(赤)の色と関係なく働き、表皮へのダメージを少なくして真皮内にまで熱エネルギーが到達してコラーゲンのリモデリングを行うというものです。いってみれば電極の間に高周波を通し、真皮を電子レンジでチンするイメージでしょうか(ラジオ波はマイクロウエイブより長い波長ですが)。皮膚や皮下組織の引き締め効果があり、しわ、たるみに有効というものです。さまざまな機器があり、表皮のダメージを回避して、真皮組織の再構築をうたっていましたが、温熱作用の長所・短所の検討はまだまだこれからという感じでした。バイポーラーの機器よりもモノポーラーの機器の方が真皮深くまで到達し、しわ、たるみへの効果が高いそうです。ただ、この施術の効果ははすぐに眼に見えて現れるわけではなく、リフトアップなどの手術程の効果はないので、過度の期待を持たせないことも必要とのことです。
 レーザーの分野は近年日進月歩というか、一寸ついていけない程の速さですが、一般の皮膚科医も知らないでは済まない時代になってきたようです。
 ただ、これら機器は大体欧米が先行して欧米人を対象として開発されたものですが、我々日本人とは肌質、反応性が異なります。欧米人よりも、日本人はしみ、色素沈着、瘢痕を起こしやすいとされています。本邦独自の研究が必要でしょう。またレーザーに造詣の深い先生方が治療による光老化、色素性母斑の悪性化などを含め、まだ理論的な裏付けが進んでいないことの危惧も述べていました。日進月歩のこの分野はこれからいろいろとより最適な機器・方法が開発されることが期待されます。それにしても眼を見張るような数々の報告でした。

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