にきびQ&A(4)抗菌薬

Q: ニキビの抗菌薬の使い方について教えて下さい。 A: 抗菌薬には外用剤と内服剤がありますが、まず外用剤から説明します。 抗菌薬使用の主な目的は、ニキビの悪化因子の一つであるニキビ菌 (Propionibacterium acnes) を減らすこと、また皮膚で二次的に増えた細菌を殺菌することです。ただ、抗生剤の種類によっては、抗炎症作用や免疫調整作用を持っていて、単なる殺菌作用だけではなく、それによるニキビの改善を期待した使い方もされています。 日本ではクリンダマイシン(ダラシン)ゲル・ローションとナジフロキサシン(アクアチム)クリーム・ローションが主に使用されていますが、海外では他にエリスロマイシン、テトラサイクリンも広く使用されています。むしろ海外でのナジフロキサシンの使用は少ないようです。ナジフロキサシンはニューキノロン系の抗菌薬ですが、DNAジャイレースを阻害したり、トポイソメラーゼⅣ阻害作用を持ち細菌のDNA複製を抑制したり、複数経路で抗菌作用を発揮するために薬剤耐性ができにくいとされています。 外用抗菌薬の作用、効果は比較的マイルドで遅く、細菌の薬剤耐性を誘導する可能性があるために、単独での使用は勧められません。先に述べたようにアダパレン(ディフェリン)との併用がニキビの第一選択肢として勧められています。 過酸化ベンゾイル(BPO)やアゼライン酸も抗菌作用があり、耐性菌を誘導しないので海外では併用されたり混合した外用剤が使用されていますが、残念ながら日本ではまだ使用が認可されていません。 では具体的に抗菌外用剤とディフェリンをどのように使い分けるかを説明します。 ディフェリンは夜洗顔後に1回顔全体に塗布します。抗菌薬は1日2回炎症部位(丘疹、膿疱など)に部分的に塗布します。つける順番は剤形にもよります。ローションなど水溶性のものを先に、クリームなどを後から付けますが、厳密な決まりはないので個人個人で塗り易い、塗り心地の良い方法を選択すれば良いようです。 一般に油症の人はゲル、ローションなどがお勧めで、乾燥肌の人や冬場はクリームや軟膏剤を選べばよいでしょう。
Q: 内服抗菌剤にはどんなものがあるのですか。 A: 日本で保険適用のある抗菌薬は次のものです。 ロキシスロマイシン(ルリッド)、ファロペネム(ファロム)、セフロキシム・アキセチル(オラセフ)、レボフロキサシン(クラビット)、トスフロキサシン(オゼックス)、スパルフロキサシン(スパラ)。このうち抗菌作用以外に抗炎症作用を持っているのはルリッドのみです。 しかし、長年の使用実績より抗炎症作用を併せ持つ、テトラサイクリン系のミノサイクリン、ドキシサイクリンが最も有用なために実はこの2剤が推奨度Aとなっており、推奨度Bがルリッドです。他の保険適応のある薬剤は推奨度Cとなっています。 内服抗菌薬は薬剤耐性菌の問題のためにできるだけ短期間に留めるのが良いとされています。一般に効果が期待できるのには最低6~8週間といわれます。 ファロムは重症例にも効果がありますが、2週間以内に留めるのが原則とされます。 ミノマイシン、ルリッド等の少量投与の期間について明確な記述はないようです。6~8カ月継続するといったガイドラインもあるようですが、いずれにしても短期間の方が耐性菌の出現、副作用の出現は避けられます。 特にミノマイシンの長期投与では皮膚・歯牙への色素沈着や肝機能障害などに注意が必要です。 本邦での耐性化は欧米ほどには進んでいないとのことですし、これとにきびの難治化とはまた別問題のようですが、やはり不必要な長期の抗菌剤の内服は避ける必要があります。
参考文献 皮膚科臨床アセット8 変貌する痤瘡マネージメント 総編集◎古江増隆  専門編集◎林 伸和  中山書店 2011

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