にきびQ&A(8)レーザー治療

日本皮膚科学会のニキビに対するガイドラインではレーザー治療は「各種レーザー治療器の特性を理解した上で、治療効果が期待できる皮疹に対して行う」ことになっています。
先に述べた様に、保険がきかず、高価で本邦での検討が不十分なので推奨はしない、各自の医師の責任のもとに行う、ことになっています。
専門書をみると、各種のレーザーが有効であることが示されていますが、それらの比較検討試験はなく、大規模な使用試験もないようです。ですから、下にあげたものもその有用性の位置づけ、評価は今後の課題となると思います。

Q:ニキビに効果のあるレーザーにはどんなものがありますか。
A:以下のものが有効との報告があります。
《色素レーザー》
新型の色素レーザー( Vbeam )はニキビの治療に有効であるとの報告が増えてきています。
色素レーザーは赤血球に吸収されたレーザー光の熱エネルギーによって、血管壁を破壊して血管腫を治療するものです。第1世代の色素レーザーはパルス幅450μsecで小児の血管壁から計算されたものです。ただ、このタイプではより太い血管には効果がありませんでした。その後第2世代の色素レーザーとしてより太い血管をターゲットとした色素レーザー ( Vbeam 米国キャンデラ社 )が発売されました。これはパルス幅を長くしてより深在性の血管腫への治療効果が見込まれます。しかしながら、パルス幅が長くなると熱作用が強くなり瘢痕をきたす可能性もでてきます。Vbeamはそれを防ぐために皮膚表面を冷却する装置を兼ね備えています( long pulsed dye laser: LPDL )。
色素レーザーのニキビへの効果の機序は
1. 毛包内のニキビ菌である常在菌Propionibacterium acnesはポルフィリン(主にプロトポルフィリンⅨ:PpⅨ)を産生しますが、色素レーザーはヘモグロビンだけではなくPpⅨも標的として殺菌します。
2. 色素レーザーによって創傷治癒と膠原繊維合成に役立つTGF-β1が増加し、ニキビを改善する機序も考えられています。
3. このほか、皮脂の除去、角化障害抑制、抗炎症作用などの機序も有るとのことです。
実際の治療報告では、出力を高くして紫斑を形成し1週間後に軽い痂皮が剥離してニキビも軽快するというやり方や、より出力を落として紫斑のできない範囲で紅斑やニキビを改善するやり方などがあるようです。
色素レーザーが血管腫に対して医療承認を受けた現在、Vbeamを導入する施設も増えてくると思われ今後報告はさらに増えると予想されます。
但し、その効果はPDTよりは劣るとのことです。

《photopneumatic technology》
Isolaz Proは米国のFDA承認の機器で皮膚の吸引と光の放射を利用したブロードバンドの光線を照射する機器だそうです。ハンドピースを皮膚に当てると自動的にチップ内部が陰圧になり、皮膚表面が伸展され低出力で光線の作用がアップし、毛包内の皮脂、膿の排出効果があるとのことです。(乃木田)
まだ本邦では一般的では機器ではありませんが、将来有望なツールとなるかもしれません。

Q: ニキビ痕(瘢痕)に効くレーザーはありますか。
A: 基本的に瘢痕は治らないもので、諸外国でも治療に苦労しているようです。したがって瘢痕の治療は根治(cure)ではなく軽快、皮疹の改善(care)を目標とすることになります。一番大切なのは早期に治療して瘢痕をなるべく作らないことです。
この中で、いくつかの試みはなされています。
《abrasive laser abrasion》
Abrasionとは削皮術のことで、皮膚表面を削りとることを意味します。高速グラインダーなどで物理的に皮膚表面を削りとることもできますが、ケミカルピーリングのように化学薬品によっても、レーザーによっても削り取ることができます。最初に炭酸ガスレーザーなどの赤外線レーザーで皮膚を削り取る方法が登場しましたが、白色人種には有効なこの方法も、シミ、傷痕のでき易いわれわれ東洋人では術後に発赤、腫脹、色素沈着、または瘢痕を形成するリスクなどがあり、日本では一般的にはなりませんでした。
レーザーの瘢痕に対する治療機序は、真皮に伝達されたレーザーの熱エネルギーによってコラーゲンが変性し、線維芽細胞が活性化し、新しいコラーゲンが再生し瘢痕が改善するというものです。
《nonabrasive laser abrasion》
レーザー照射と共に皮膚表面を冷却して、表皮のダメージを少なくして、真皮を熱変性によりリモデリングする方法です。水特異的レーザーと血管特異的レーザーがあります。
Nonabrasiveなだけに安全ですが、照射エネルギーは低くなり、瘢痕への効果も低くなります。
《フラクショナルレーザー療法》
NonabrativeとAbrative(削皮術)の中間に位置するものと考えられます。
2004年に提唱、開発された方法です。きわめて細い(毛根よりも細い)レーザー光をあたかも剣山のように照射する方法です。この方法ですと正常皮膚を残し点状に照射できますので、障害を受ける皮膚は少なくて効果的に瘢痕を軽減するという考えです。
これにも組織の凝固のみの、nonabrasiveなタイプと組織を蒸散させ、ドリルの穴のように組織欠損をもたらすabrasiveなタイプがあります。後者の方が効果は高いですが、やはり色素沈着や瘢痕のリスクは高まります。特に眼瞼周囲や頸の瘢痕のリスクは高く注意が必要とのことです。

レーザー治療は日進月歩で、次々に新しい機種や方式が出てきているようですが、長期に科学的に検討されたものではありません。ニキビ瘢痕に対するフラクショナルレーザー療法に対しても、専門家によっては長期的効果には疑問を述べている人もいます。
極力瘢痕を作らない、早期に手当するということが最も大切な治療法と言えるかと思います。

参考文献

皮膚科臨床アセット8 変貌する痤瘡マネージメント
総編集◎古江増隆 専門編集◎林 伸和 中山書店 2011

スキルアップ皮膚レーザー治療 編著 川田 暁 中外医学社 2011

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