名古屋の学会ーースキンケア

名古屋で皮膚科の学会があり行ってきました。折からの悪天候でどうなるかと心配していましたが、行き帰りは幸いに雨風も強くなく、何とかセーフでした。
いろんな講演がありましたけど、出られるのは限られているし半ば受動的に出ているのもあって敢えて書くこともないのですが、それでも一寸一言。
「スキンケアとアンチエイジング」というシンポジウムにでました。同時にあった「浅井・江藤のチョイ技セレクション(あえチョイシリーズ第1弾)-知って得する皮膚科診療のちょいとした裏技を探しています―」が面白そうで迷ったのですが、それは自分だけではなかったようで、座長の松永教授自ら、「私もこのセッションの座長じゃなかったら、あちらに行ってみたい。」と。
でも、出て良かったかも、と思えました。トップバッターは佐々木りか子先生の乳児のスキンケアのお話でした。先生は今は開業していますが、国立小児病院、国立成育医療センターで長いこと乳幼児、小児のアトピー性皮膚炎を診てきた先生です。国のアトピー性皮膚炎のガイドライン委員にも入っていて、話す内容にも気のせいか重みがあるように感じました。
その中でいくつか内容をピックアップしてみました。
・妊娠34週未満の胎児のバリア機構は未熟であること。生後1年をかけて徐々に発達していくこと。
・胎脂はペプチド・天然保湿成分を有していてバリア機能を持っているが、2ヶ月後頃よりその働きも弱くなり乾燥、アトピーも発症してくること。
・科学的な比較検討報告はまだありませんが、新生児期よりの保湿介入がアトピーの発症を低下させる報告もあります。
・更に保湿を十分に行っているとトータルのステロイド剤の量を減量できるとの根拠もあります。
・洗浄剤は何がよいか、いろいろ意見はありますが、アトピー児の角層はpHがアルカリ性に傾く傾向があり、これによりバリア機能が低下、炎症の悪化、黄色ブドウ球菌の増加などが起こるのでアルカリ性の石鹸より弱酸性の低刺激の界面活性剤の洗浄剤の方が天然保湿成分が減りにくく、石鹸では石鹸カスが残留し易いとのことでした。
・学童のシャワー浴は必要で群馬県などは皮膚科医が学校医として活躍していて、それを導入してからアトピーが改善したデータがあります。
など保湿、洗浄の重要性を述べられました。

 これとまた別のセッションでしたが、神奈川県の湘南皮膚科の栗原先生の「私の湿疹学―アトピー性皮膚炎を治そうー」という演題の中のスキンケアの話も面白いものでした。
ここ数年アトピー性皮膚炎でのフィラグリン遺伝子の変異が脚光を浴び、皮膚バリア機能の脆弱性が科学的にも裏付けられるようになりましたが、実地臨床の現場では、乾燥して刺激を受けやすいアトピー皮膚へのアプローチ法に格別な変化が起こったわけではないといいます。洗浄は大切ですが、モンゴルと中国東部と日本のアトピー性皮膚炎の発症率とお風呂に入る頻度を比較すると、丁度正の相関をするそうです。入浴だけではないでしょうが、洗浄だけで保湿をしないと、あるいは過度に皮脂を剥がすような垢すり的な洗浄の仕方をすると却って皮膚のバリア機構を破壊してしまうことにもなりかねないということです。
またステロイド剤によって炎症は抑えられますが、これによって、皮膚は薄くなり、乾燥し易くなる傾向があります。すなわちバリア機能に対しては決して好ましい方向には働かないことになります。そこでステロイド、タクロリムスを上手に使いこなす必要性があるということになります。

いずれも一部内容のピックアップですが、いろいろ考えさせられました。
洗浄は重要だけど、やり方次第では却って悪化したり、保湿剤の使い方、汗の功罪、風呂の入り方、時間、温度、回数などもケースバイケースのようでもありました。
アトピーの講演は何回も聞いてはいるけれど、全てをカバーする一律な規則、魔法のツールはまだないような気がします。
いろいろ解ってきたけど、まだ解らないことのほうが多い、と言った方が当たっているかもしれません。
アトピーの基礎医学は随分進歩してきたけど未だ治療のブレークスルーはないような気がします。
だから患者さんにとっては千葉大の神戸先生が紹介していたようなネットでの声が多いのかもしれません。(一部抜粋)
接触皮膚炎のことが終わったらそろそろアトピー性皮膚炎のこと書こうかと思っていましたが気が重いです。

・良い皮膚科ないよ・・・。何か所もいったけどダメ。
・先生が丁寧で親切、評判良いみたいだけど治らなかった。
・どこに行ってもステ漬け。皮膚科って話も聞かない。診察時間も1分ほど、ステ を赤ちゃんでも使えると気軽に出す、なんでこんな藪医者ばっかなのかって思う よ。ステを拒めば「塗ればすぐに治るのに!」とか言ってくるし・・マジ最悪。
・ステがでただけで、ガイドライン通りとか標準とか連呼していた。ガッカリ。言 うことも教科書通りで患者の体験とかまったく参考にしてないし。

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