ヨテボリ便り(3)

翌日は、早朝に起きてバスで宿からモルンダールに行きました。まだ薄暗く周りには人家も少なく一寸不安な1日の始まりでした。バスは1時間に2,3本のみで乗客もほんの数人です。モルンダールからはトラムに乗りました。ただ昨日も乗ったトラムなので勝手はわかっています。学会場Korsvagenまでゆっくり走って行きます。学会場は一々ネームタグをチェックされ、出入りは厳重でした。足が向くのはやはり興味があるというか、なじみのあるアトピー性皮膚炎とか乾癬のセッションになってしまいます。英語はところどころしか理解できなくても皮膚科の場合はスライドの写真と文字が手助けになります。久しぶりの国際学会は緊張しながらも新鮮な感慨がありました。近年角化関連遺伝子で魚鱗癬の責任遺伝子であるフィラグリンの異常がアトピー性皮膚炎でもみつかったことがトピックスですが、この異常はアトピー性皮膚炎全体のごく一部とのことでした。それ以外でも数種類のアトピー皮膚炎のアレルギーに関与する遺伝子が数年内に同定されるだろうという話は興味を引きました。アトピー性皮膚炎のアレルギー、バリア異常の原因についても遺伝子レベルで説明される日も遠くないのかもしれません。遺伝子といえば乾癬についてもいくつかの責任遺伝子座が同定されたとの報告がありましたが、それは小生がかつて留学していたミシガン大学皮膚科のラボのボスJT Elderのものでした。あのころはドイツのラボと共同でtwin studyを始めていていたばかりでしたが、ついに発見に至ったのでしょう。乾癬の治療報告はヨーロッパでも生物学的製剤が主流で治療によって一時的でも病気が治癒状態となるのも現実のようです。華々しい科学の発展にもかかわらず興味深かったのはアンケートによる乾癬患者の治療に対する満足度は決して高くなかったことでした。薬剤が高価であったり副作用も複雑になりつつあったりします。患者の満足のいく治療の道のりはまだまだ遠いのだなーと思いました。
 昼休み時間を利用して外に出てみました。ヨーテボリ(英語名はGothenburg)は小さな街ですが、あのボルボやハッセルブラッドの本社のある街でもあり、ヨーロッパ本土(?)に近くスウェーデンの第2の都市として栄えています。すぐ近くにリセベリー公園というきれいな公園があるのですが、ここもチボリ公園と同様閉園していました。どうも冬期の北欧の公園はいけません。期間中の無料チケットが付いていましたのでトラムで中央駅まで出ました。駅はスウェーデン最古といわれるだけあって重厚な感じでした。駅の西側にはノルドスタンといわれる大きなショッピングモールがあります。しばしぶらぶら見物をしました。
 午後はまた学会場に戻り、企業展示などもみてみました。近年の皮膚科展示はいずこもレーザーの企業が盛況です。高額な機器をみても仕方ないので書籍などみたりしました。夜はワインと一寸した料理のプレートがでました。宿へはまたタクシーで帰りました。鼻歌交じりの調子のいい運転手だなーと思っていました。メーターもなんか変にいじっていてだんだん不安な感じになっていきました。案の定、宿に着いたら料金が322SEKだといいます。冗談じゃない、昨日は227SEKだってこっちは知っているんだ、だまされるかと思い、おかしいんじゃないかといいますと会社が違う、夜だ、サービスが違うなどと訳のわからないことを言います。昨日の方が雨だし夜だしむしろ高いはずだと食い下がりますが、一寸ガラの悪そうな中東系の運転手で(一般の中東系がどうこうではなく、たまたまその人が変だったのでしょう)一向に埒があきません。ここで喧嘩沙汰になっても困ると思いそのまま支払いましたが、不愉快な思いをしました。学会ホームページでタクシーはガラス面に印のあるどこそこの車種を利用することと注記してあった意味がやっと解った次第でした。
 翌日はバスもトラムも慣れてきました。ヨテボリだけではありませんが、北欧では改札はなく自由に乗り降りできます。但し、抜き打ちで検札があるとのことです。ここで無賃乗車が発覚すると法外な罰則金を科せられます。それで無賃乗車を防いでいるようです。改札の人件費、手間はなくなりますし一つの良い方法ではあります。
 ヨーロッパの学会で日本と違うのは演者にもよりますが、聴衆に意見をもとめたり、挙手を求めたり、yes,no カードが渡されてどちらかを挙げさせられたりすることです。小生も周りを窺いながらも挙手したりしました。またユーモアたっぷりに笑いをとったりする演者もありました。それと目についたのはインド人の数の多さと質問の多さでした。内容はともかく近い将来、皮膚科においても一大勢力になるような気がしました。以前アメリカ留学中もインド人、中国人の多さと押しの強さには驚いたものですが、数のパワーもさるものながらすごく優秀な人材が一杯いて欧米に進出していました。ちなみにJTのラボの乾癬の実験もインド人のPhDが中心にやっておりました。
 夜は最後のヨテボリとなるので、中央駅へトラムで向かいブルンスパルケン広場からフレズガータン通り、クングスポルツ広場など市の目抜き通りを散策しました。一寸洒落たレストランに入り、お勧めのサーモン料理とお勧めのワインを堪能しました。帰りはもうタクシーは懲りたので、トラムでゆっくりもう二度と来ないであろう街並みを眺めながら宿屋に帰っていきました。
(続く)
学会場前.jpg中央駅.jpg

ノルドスタン.jpgノルドスタン出口.jpgクングスポルツ広場.jpg夜の街並.jpg

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