接触皮膚炎の現況と展望

昨日、新進気鋭の若手皮膚科医のアレルギー関連の講演会2題がありました。丁度アレルギー関連の病気を調べていることもあり、興味を持って参加しました。そこでの情報と印象記です。 「接触皮膚炎の現況と展望」東京医科歯科大学   高山かおる先生 「アトピー性皮膚炎治療の新たな展開――病態知見から得た新事実――」 大阪大学 室田浩之先生 高山先生は日本皮膚科学会での接触皮膚炎ガイドライン作成も担当されており、それを踏まえての講演でした。そのうちの気になったものを何点か挙げます。 1. ケトプロフェンは強い光感作物質ですが、痛み止めの貼り薬にこの物質が入っているものがあります。肌色をしていて貼り易く、露光部には注意と書いてありますがスポーツをした後などに貼って’光かぶれ’をする人が多く見られます。この貼り薬が一般の薬局でも買えるようになり、今後一層患者さんの増加が懸念されるところです。皆様、表示をよく見てから使用しましょう。 2. パラフェニレンジアミン(PPD)は毛染めに含まれる強い感作物質で、時に激しいかぶれ症状を起こしますが、強い真皮の浮腫を伴います。実際に、顔がお岩さんのように腫れる例も経験します。髪の毛の生え際、首など液が流れ落ちた部位に強く症状が現れます。植物、天然の毛染めで大丈夫と思われるヘナにもPPDが含まれる事があり、かぶれることもあります。 3. スギ花粉皮膚炎でも顔がかぶれる事があり、スギ抗原のプリックパッチテストで陽性になりますが、アトピー性皮膚炎の患者さんの3割もの人がこれに該当するとのことです。一見蕁麻疹様の浮腫性の紅斑が特徴です。風が強く雨の後に症状が強くでるそうです。 4. ヒアレインミニ目薬の中のアミノカプロン酸、デスクマットに含まれるTCMSP これらは抗菌剤ですが、アレルギーの原因にもなります。生薬入りのシャンプー、キュレル、ホホバオイルによる接触皮膚炎、ラワン材の鍬によるものなどの紹介もありました。小生のホームページにも書きましたが、さまざまな思わぬ物質にアレルギーとなることがあります。 5. 金属アレルギー、特に全身性金属アレルギーは近年報告が増えており問題になっています。ホームページにも書きましたが、異汗性湿疹、掌蹠膿疱症の原因にもなることもあり、食事性の場合もあります。但し、パッチテスト陽性といっても歯科金属の除去などの評価・適応、原因の特定、臨床の評価など専門的な知識が必要で、何でも歯を抜けば良いというわけでもありません。 6. 歯科従事者のメタクリルレジンアレルギーも問題になっています。この物質は手袋を通過するので厄介です。歯科金属アレルギーが重要視されるようになるとともに、これからはレジン、チタンのアレルギーの問題も注意深く見守る必要性がありそうです。
湿疹は皮膚科の外来で最も頻度の多い病気ですが、慢性の湿疹の中で原因物質がはっきりしているものを接触皮膚炎と言います。この原因物質を推定して特定し、その原因を取り除くことができれば治癒できる病気です。 それゆえにパッチテストでの原因の特定は重要ですが、実地診療では困難なこともあります。
長くなるので、今回は第1部の接触皮膚炎のみのレポートとしました。

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