皮膚抗酸菌感染症

抗酸菌Mycobacteriumは、長径1~10μm、直径0.2~0.6μm前後の無芽胞、好気性、非運動性のグラム陽性桿菌で、約80種類がみつかっています。細胞壁は蝋様の脂質に富んでいるために、グラム染色では染まりません。Ziehl-Neelsen染色などの抗酸菌染色で陽性に染まるので、抗酸菌(acid-fast bacterium:AFB)と呼ばれます。ヒトに対する病原性があるのは、結核菌、ウシ型結核菌、ライ菌、および非結核性抗酸菌(non-tuberculous mycobacteriosis:NTM)です。結核菌はヒトーヒト感染をしますが、NTMは土や水など身近な環境に生息しています。ヒトーヒト感染はしません。
【抗酸菌の検査、証明】
●塗抹
膿汁、浸出液、生検材料をスライドガラスに塗抹したものを抗酸菌染色します。通常Ziehl-Neelsen染色が行われ抗酸菌は赤く、その他の菌は青く染まります。菌量が少ないと陽性になりませんが、最近では蛍光法が導入され感度が上昇してきています。
●病理組織学的検査
典型的な所見としては、中心部に乾酪壊死を伴い、その周囲に類上皮細胞およびLanghans型巨細胞の浸潤、その外側にリンパ球浸潤を認めるといった3層構造をとります。しかし典型的な像を示さないことも多く、サルコイドーシスや深在性真菌症などその他の肉芽腫性疾患との鑑別を要する事もあります。
●抗酸菌培養
材料を小川培地に接種して培養します。菌によって発育速度が異なるために通常の37度だけではなく室温(25度)の培養も行います。
●遺伝子検査
PCR法は迅速な検査ですが、生菌、死菌の区別はつきません。また偽陽性になることもあり注意を要します。
●質量分析法(MALDI-TOF MS)
(国立療養所多摩全生園 石井 則久 先生 による )
最近は、質量分析法が多用されています。但し、下記の注意事項があります。
1.大病院、臨床検査機関で検査可能。
2.培養成功した菌を用いる。
3.登録されたデータベースの菌株パターンとの比較で瞬時に一致パターンを調べうる。
4.10分足らずで菌株同定が可能である。
5.同定できない原因菌株がある。
     
●ツベルクリン反応
ツベルクリン抗原PPD(purified protein derivative of tuberculin)を皮内に注射して、遅発型アレルギー反応を見ます。ツ反は結核菌感染以外にBCG接種でも陽転化し、時にNTM感染、Hansen病でも陽性を呈します。逆に免疫不全状態では結核感染でも陰性になることがあるので注意を要します。
●インターフェロンγ遊離試験(IGRA:interferon-γ release assay )
結核菌特異蛋白をヒト全血または末梢血単核球に添加して培養すると、結核菌に感作したT細胞はIFN-γを産生します。それを測定する方法でクオンティフェロン検査とT-SPOT方法があります。採血、検査上それぞれにメリット、デメリットがありますが総じてTスポットの方が採血現場においては容易であり、感度、特異度とも高いので今後はTスポットの方が優位に立つであろうとされています。
●他臓器の結核あるいは抗酸菌症の検索
皮膚結核あるいはNTMが発見、疑われた場合は胸部X線、胸部CT,超音波検査、MRIなどの画像検査を行って内臓病変を確認していく必要があります。

各論の皮膚結核、非結核性抗酸菌症、ハンセン病についてはそれぞれに調べて別項で書いてみます。

参考文献

標準皮膚科学 第11版 監修 岩月啓氏 編集 照井 正・石河 晃
第25章 皮膚結核および皮膚非結核性抗酸菌症

JDA eSchool 皮膚抗酸菌症 国立療養所多摩全生園 石井 即久 先生