あせものより

 ”あせものより”と一般にいわれる病気は医学用語では(乳児)多発性汗腺膿瘍とよばれます。あせも(汗疹)が悪化し、黄色ブドウ球菌が感染し皮膚の浅在性あるいは深在性の化膿性の膿瘍が生じたものです。近年は住環境が整備され、エアコンなどであせも自体も少なくなり、以前ほど多くはみられなくなりました。
 ただ、”あせも”や”あせものより”という語句は耳にしてもそれぞれに思い描く臨床像は人によって様々で実像とは解離していることもままみられます。
 まず、あせもとは何か? 成書には「汗貯留症候群と同義で、多量発汗時に汗管が閉塞され、汗管に貯留した汗が汗管周囲の組織に漏出して生じる。」、と記載されています。汗管の閉塞の深さによって3型に分けられます。
1.水晶様汗疹・・・角層内、下にできる炎症を伴わない粟粒大の水滴のような透明な小水疱の多発
2.紅色汗疹・・・表皮内汗管の閉塞による。多量の発汗後数mmまでの紅色小丘疹や赤みを伴った小水疱の多発。かるい痒みを伴います。湿疹化したり化膿することもあります。
3.深在性汗疹・・・表皮、真皮境界部の汗管の閉塞による。紅色汗疹の反復によって生じます。主に熱帯地方で生じ、常色の扁平な丘疹が敷石状に多発します。
(あせもについては過去に当ブログにも書きましたので参考までに)

あせも

 本題の多発性汗腺膿瘍ですが、あせもに続発して生じるので新生児、乳幼児に主にみられます。化膿性汗腺周囲炎、エックリン汗孔炎、膿疱性汗疹とよばれる表在性の汗腺の膿皮症と混在して生じることもあり深在性病変を生じます。黄色ブドウ球菌が感染して生じ汗管、汗腺も破壊され、多発性の膿疱、膿瘍を生じます。頭部、顔、臀部に好発し、エンドウ大から更にはピンポン大にまで拡大し、有痛性紅色結節となり波動を触れるものもあります。こういった場合には発熱、リンパ節腫脹を伴います。膿瘍は自壊することもあります。
治療は、感受性のある抗菌薬の内外用薬を使用しますが、近年はMRSAの頻度が高くなっていてセフェム系抗菌薬、ホスホマイシン、ミノマイシン(8歳以下禁忌)、オゼックス、バクタなどが用いられます。膿瘍の程度によっては切開、排膿も必要になってきます。
また涼しい環境に置き、発汗後の汗を洗い流すなど、清潔に心がけることも必要です。

また化膿性汗腺炎という疾患がありますが、名称は似ているもののアポクリン系汗器官で成人に生じる慢性膿皮症でここで取り上げた疾患とは別疾患です。これはまた改めてアップしたいと思います。