皮膚リンパ腫・分類

造血器腫瘍(血液のがん)には悪性リンパ腫、白血病、骨髄腫などがあります。
この中で悪性リンパ腫は約半数を占めます。ちなみにリンパ性白血病は血液の中でリンパ球系の細胞が悪性化したもので、リンパ腫は血液外のリンパ節、節外性(消化管、脳、肺、精巣、皮膚など)に腫瘍(塊り)を形成したものをいいます。
 悪性リンパ腫は、ホジキン(Hodgikin)リンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられます。欧米ではホジキンリンパ腫が多いのに比べて本邦では、非ホジキンリンパ腫が圧倒的に多く(90%以上)、70歳台が発症のピークで、男女比は3:2で男性に多く発症します。ホジキンリンパ腫は節性(リンパ節に原発)のことが多く、非ホジキンリンパ腫は節性、節外性(リンパ節以外に原発)いずれもあります。非ホジキンリンパ腫はB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫に分けられます。非ホジキンリンパ腫の分類は覚えきれないくらい多数あり、(WHO分類で60種類以上)多くはB細胞性ですが、皮膚ではT細胞との親和性が高くT細胞性のリンパ腫が多く(約80%)を占めます。
 皮膚(悪性)リンパ腫とは皮膚組織の中のリンパ球ががん化したもので、原発性(皮膚に節外性に初めに発症したリンパ腫で、診断時に他臓器で腫瘍細胞を認めないもの)と続発性(リンパ節など皮膚外の臓器に発生した悪性リンパ腫が皮膚に浸潤したもの)に分けられます。
 日本皮膚科学会の皮膚リンパ腫のガイドラインでは、原発性のみを取り扱い、続発性は除かれています。それにそった皮膚リンパ腫の分類は下記のようになります。(リンパ腫は発症頻度や病型に人種差があり、検査や治療選択肢の著しい進歩により、近年改訂が繰り返されてきています。)
先に述べたように皮膚ではT細胞リンパ腫の割合が高いですが、その中でも50~60%を菌状息肉症が占め、成人T細胞白血病/リンパ腫、原発性皮膚CD30陽性リンパ増殖異常症がそれに続き、その他の病型は比較的稀です。

皮膚リンパ腫の病型

【皮膚T細胞・NK細胞リンパ腫】
菌状息肉症(Mycosis fungoides:MF)
菌状息肉症のバリアントと亜型
・・・・毛包向性菌状息肉症(Folliculotropic MF)
・・・・パジェット様細網症(pagetoid reticulosis)
・・・・肉芽腫様弛緩皮膚(Granulomatous slack skin)
セザリー症候群(Sezary syndrome)
成人T細胞白血病・リンパ腫(Adult T cell leukemia/lymphoma)
原発性皮膚CD30陽性リンパ増殖異常症(Primary cutaneous CD30+ T-cell lymphoproliferative disordrs)
 ・原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(Primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma)
 ・リンパ腫様丘疹症(Lymphomatoid papulosis)
皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫(Subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma)
節外性NK/T細胞リンパ腫。鼻型(Extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type)
種痘様水疱症様リンパ増殖異常症(Hydroa vacctiniforme-like lymphoproliferative disorder)
重症型蚊刺アレルギー(Severe mosquito allergy)
原発型γδT細胞リンパ腫(Primary cutaneous γδ T-cell lymphoma)
原発性皮膚CD8陽性進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫(Primary cutaneous CD8+ aggressive epidermotropic cytototoxic T-cell lymphoma)
原発性皮膚CD4陽性小型・中型T細胞リンパ腫増殖異常症(Primary cutaneous CD4+ small/medium T-cell lymphoproliferative disorder)
末梢性T細胞リンパ腫、非特定型(Periferal T-cell lymphoma, NOS)
原発性皮膚末端型CD8陽性T細胞リンパ腫(Primary cutaneous acral CD8+ T-cell lymphoma)

【皮膚B細胞リンパ腫】
粘膜関連リンパ組織節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)(Extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue)
原発性皮膚濾胞中心リンパ腫(Primary cutaneous follicle center lymphoma)
原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、下肢型(Primary cutaneous diffuse large B-cell lymphoma, leg type)
EBV陽性粘膜皮膚潰瘍 (EBV+ mucocutaneous ulcer)
血管内大細胞型B細胞リンパ腫(Inttravascular large B-cell lymphoma)

参考文献

日本皮膚科学会ガイドライン
皮膚リンパ腫診療ガイドライン2020 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン改訂委員会 皮膚リンパ腫診療ガイドライングループ 委員長 菅谷 誠 日皮会誌:130(6), 1347-1423,2020(令和2)

宮垣朝光 皮膚T細胞リンパ腫 pp253 皮膚疾患 最新の治療 2023-2024 編集 高橋健造 佐伯秀久 南江堂 東京 2022