無題

最近、なぜか漢詩に惹かれるようになってきました。
無論、漢文などは高校時代に国語で習っただけで、読み方も良くわかりませんが、解説文などを見ながら眺めていると心に響く詩が結構あるのです。だんだん年を取って懐古趣味になってきたのかもしれませんが。
中国と日本は2000年もの長きに亘って交流がありながら、現在は尖閣のことなどからぎくしゃくしてしまっています。現在の中国に対してはどうしても好きにはなれませんが、将来的には何とかよりを戻してほしいものです。
特に杜甫の晩年の詩などがだんだん好きになってきたのは、次第に老いてきた証左かもしれません。

登高           杜甫
風急天高猿嘯哀    風急に天高くして猿嘯(えんしょう)哀し
渚清沙白鳥飛廻    渚清く沙(すな)白くして鳥飛び廻る
無辺落木蕭蕭下    無辺の落木蕭蕭(しょうしょう)として下り
不尽長江滾滾来    不尽の長江は滾滾(こんこん)として来る
万里悲秋常作客    万里悲秋常に客(かく)と作(な)り
百年多病独登台    百年多病独り台に登る
艱難苦恨繁霜鬢    艱難苦(はなは)だ恨む繁霜の鬢(びん)
潦倒新停濁酒杯    潦倒(ろうとう)新たに停(とど)む濁酒の杯

秋風が激しく吹き 空は晴れ上がり 猿が悲しげに鳴いている
眼下の川辺の水は澄み 砂は白く輝いて 鳥が輪を描いて飛んでいる
木の葉は絶え間なく カサコソと音をたてて散り
尽きることのない長江は こんこんと湧きだすように流れ下る
遠く離れた他国で悲しみをそそる秋に出合う私はいつまでも旅人の身
そのうえ生涯 病がちで たった一人いま高台に上っている
さまざまな苦難に出合ったため鬢が真っ白になったのが恨めしい
老いさらばえたこの身ゆえ にごり酒もやめたばかりだ
                       (渡部 英喜 訳)