薬疹について

時折薬疹についての記事を書いてきました。重症薬疹や光線過敏性薬疹など、ワンポイントの講演要旨などをまとめたりしていましたが、系統だって調べたり、まとめたりはしてきませんでした。時代と共に使われる薬剤は異なり、増加し、また分子標的薬など従来と全く異なった機序の薬剤も登場してきました。当然の事ながら、薬疹の様相も従来とは随分異なってきました。また、薬疹の原因、機序も随分解明が進んできました。
特に、日本からの塩原先生、橋本先生らが同時に発表したDIHS(drug induced hypersensitivity syndrome)薬剤性過敏症症候群で薬疹における6型ヒトヘルペスウイルス(HHV-6)の関与を明らかにした論文によって、それまでの薬疹の機序の概念はパラダイムシフトと呼べるほどの変遷を遂げました。
また近年は特定の薬剤に対する薬疹と特定のHLAアリルとが関連することも分かってきました。台湾では漢民族の中でHLA-B 1502を有する患者とカルバマゼピンの薬疹の関連がわかり、事前にこれらの患者さんにカルバマゼピンの投与を避けたところ、重症薬疹の発生を有意に低下できることが確認されています。

開業してからは、重症薬疹はほとんどお目にかからず、縁遠いものとなってきました。しかし、全身が真っ赤になって発熱があり、重症になりそうで近隣の病院に診療をお願いした薬疹疑いのケースは多々あります。また、本をみていると、Stevens-Johnson症候群やTEN型重症薬疹の写真の中に、薬局で販売している風邪薬や医院でよく処方する解熱剤などが原因であるケースも含まれています。
自分には無関係と思っている重症薬疹がいつか我が身に降りかかってくるリスクはゼロとはいえません。

上に記したように薬疹の病態、研究、治療は日進月歩の変遷を遂げてきているようです。
時々の聞きかじった講演内容と教本からではありますが、薬疹の現況を概観してみようと思います。