メラノーマの予後

日本皮膚悪性腫瘍学会が行なっている悪性腫瘍黒色腫予後調査では2005年から3000例近い症例を集積しています。それによると病変が局所に留まる症例は全体の61%、リンパ節に及ぶ例が22%、遠隔転移がある例が11%だそうです。米国の統計ではそれぞれ84%、9%、4%で、本邦ではまだ欧米に比べるとメラノーマの認知度が低く早期発見の率が低いといえます。
一般にメラノーマは悪性度の高い腫瘍で予後は非常に悪いという認識があります。それは事実ですが、一方で早期のもの、特に in situ  病変に限ってみるとほぼ100%に近い治癒率です。ただ、腫瘍厚が厚くなり、潰瘍形成を伴うと一気に予後が悪くなります。
【国内の統計】
国内の約3000例の統計によると、平均年齢は66歳で男女比はやや女性に多く、妊娠例は1.2%で妊娠と予後の関連は見られませんでした。家族歴では4.6%と一般よりやや高くみられました。
自覚してから受診までの期間は平均70.3ヶ月でした。粘膜原発が最も短期間でしたが、これは自覚しにくく、気づいた時にはすでにかなり進行していることを示唆しているものと思われます。
最も多い病型は末端黒子型(ALM)の41%で、表在拡大型(SSM)の20%,結節型(NM)の10%、悪性黒子型(LMM)の8%の順でした。粘膜原発は9%と本邦では海外に比べて多い結果でした。
【TNM分類による予後】
TNM分類では以下のように分類されます。
T:Tumor(腫瘍) 厚さ
Tis(表皮内) 適応しない
T1 ≦1 mm
T2 1~2.0 mm
T3 2~4.0 mm
T4 >4.0 mm
N:(lymphnode) 転移リンパ節の数
N0 転移なし
N1 1個のリンパ節転移 a:顕微鏡的転移 b:肉眼的転移
N2 2-3個のリンパ節転移 c:in-transit転移または衛星病巣(リンパ節転移なし)
N3 4個以上のリンパ節転移 c:in-transit転移または衛星病巣(リンパ節転移あり)
M: (metastasis) 遠隔転移の部位
M0 遠隔転移なし
M1a 遠隔の皮膚、皮下、リンパ節転移
M1b 肺転移
M1c 全ての遠隔転移、LDHの上昇
【病期分類】
UICCの病期分類では、TNM分類の程度によってstage 0~Ⅳ期に分けられています。
<原発巣のみ>
stage0・・・・・・Tis
腫瘍の厚さ・・・・・潰瘍なし・・・・・潰瘍あり
T1 ・・・・・・・・・IA・・・・・・・・IB
T2・・・・・・・・・・IB・・・・・・・ⅡA
T3・・・・・・・・・・ⅡA・・・・・・・ⅡB
T4・・・・・・・・・・ⅡB・・・・・・・ⅡC
<リンパ節転移あり>(T,N 潰瘍の有無により複雑に分類されている)
ⅢA・・・・・・・・・T1a-4a, N1a,2a
ⅢB・・・・・・・・・T1a-4a, N1b,2b,2c
……………….T1b-4b, N1a,2a,2c
ⅢC・・・・・・・・・T1b-4b, N1b,2b
……………….Any T, N3
<遠隔転移あり>
M1・・・・・・・・・Ⅳ

当然ステージが進むと生存率も低下しますが、Tisでは手術によりほぼ100%の生存率があります。
また、転移はなくても腫瘍の厚さが厚くなり、4mmを超えると、また潰瘍を形成すると予後が急激に悪化してるのが下記のグラフをみるとわかります。
黒い腫瘍に対しては、平らで、シミの状態の時は切除か、注意深く経過をみること、腫瘍が隆起してきて、しかも潰瘍を作るようならそのままほっておかないことが大切ということになります。

しかし、メラノーマの臨床型、経過は非常にバリエーションがあり一律に決めつけられないところがあります。
経験深い専門医の慎重な診断・治療が求められる所以です。

参考文献

1) 藤澤康弘 皮膚がん予後統計の最新情報(疫学・補助療法の効果) ◆特集/メラノーマ最新情報 ◆編集企画◆ 宇原 久 MB Derma,230: 1-9,2015

2) 村田洋三 第6章 悪性黒色腫 皮膚外科学 日本皮膚外科学会【監修】 秀潤社 東京 2010, pp412-433%e3%83%a1%e3%83%a9%e3%83%8e%e3%83%bc%e3%83%9e%e7%94%9f%e5%ad%98%e7%8e%87

文献 1)より