ウイーンにて(3)

日曜日は学会もほぼ終わりです。1階のフロアーを使って、美容皮膚科のセッションが集中的に行われるだけとなっていました。自分では美容皮膚科はやらないのですが、折角まとまって講演があるので、フィラーとボトックスのセッションを覗いてみました。フィラーのセッションでは、台湾からの若いドクターも口唇周りの注入について講演していました。そういえば以前のEADVでは韓国の若いドクターも美容の講演をしていました。いずれも欧米人とアジア人の骨格や審美眼点の違いについて強調していました。しかも達者な英語で。この分野は科学というより、芸術的なセンス、能力を要求される分野なのかもしれません。ただ当然医学的知識に裏打ちされるべき施術で、血管の閉塞を始め多くのピットフォールが潜んでいる事も強調されていました。
企業展示でもそうですが、美容分野での中国、韓国の企業の積極的な進出は目覚しいように思われます。それに比べて日本企業の展示は皆無なのですが、この辺の事情はどうなのでしょう。この方面に疎くてよく解りませんが。
日本人の若い先生も将来はEADVでも日本からの美のうんちくを発信していただきたいと思いました。
お昼には、閑散となって機材、ブースなどの後片付けも始まった学会場を後にしました。
以前、閉まっていて入れなかったベートーベンのハイリゲンシュタット遺書の家に行こうと思っていましたが、折から降り出した雨で出鼻を挫かれました。
それで当初予定していて雨でも大丈夫な美術史博物館に行きました。そこはハプスブルク家の至宝を集め フランツ・ヨーゼフI世が贅を尽くして造らせた美術館だそうです。
時間に余裕があったので、1階のエジプト、ギリシャ展示も割とゆっくりと見て回りました。それでもやはり見たかったのは2階の絵画でした。ブリューゲルの「雪中の狩人」、何故か心惹かれます。大方の絵は忘れたのにこの絵には再会したい思いがありました。「農民の結婚式」も臨場感に溢れ、その場の人が今にも動き出しそうです。かと思うと「バベルの塔」では神話の世界をまるで見てきたかのように描く、ブリューゲルは一体何を描こうとしていたんだろうか、でも気になる絵ばかりです。あと、ベラスケスの王女マルガリータの絵。近づいたらまともな形を成さないレースが遠ざかるにつれ、光り輝いてくる不思議さ。またレンブラントの老いてゆく自画像。彼の後半生の暗転を暗示しているかのようです。ここの美術館の絵画は何度でも観に来たくなる絵が多くありました。もっと滞在していたいウイーンをあとに夜はワルシャワへと向かいました。ショパンの生家に行き、ショパンの小コンサートを楽しんでくる予定です。