脱色素性母斑

小児の白斑でたまにみられるのが、脱色素性母斑です。うっかりすると尋常性白斑と見誤ることがあります。
これは先天性限局性の母斑ですので、その大きさは生涯不変です。
尋常性白斑とは以下の点で異なっていて鑑別できます。
ちなみに全国特定機能病院への調査では尋常性白斑が60%と最も多く、次いで感染症によるもの11%、サットン母斑8%、結節性硬化症7%、に次いで脱色素性母斑が6%を占めていました。
先天性の眼皮膚白皮症は2%です。

1)出生時ないし生後早期に出現する。
2)一生涯不変である。成長とともに正常化することもある。
3)罹患部位に知覚異常はない。
4)病変部の辺縁に色素増強はない。
5)完全な白斑ではなく、色調は少しくすんだ乳白色調の不完全脱色素斑である。
6)躯幹に発症することが多いが、顔面、頚部、上肢に生じることもある。
7)大きさは数cmから広範囲のものまであり、斑状、線状、帯状、渦巻き状など種々ある。時にBlaschko線に沿って出現することもある。
8)辺縁は鋸歯状を呈することが多い。
9)成長に伴って内部に色素性母斑や単純黒子が発生することがある。
10)多数存在する場合や、木の葉様白斑を呈するときは伊藤白斑や結節性硬化症も疑う。
11)ウッド灯(UVA)を照射することで、尋常性白斑と鑑別できる。尋常性白斑ではアイボリーホワイト、青白色の光を発するが、脱色素性母斑ではそれは見られない(off white)。

不完全脱色素斑である理由は尋常性白斑と異なって、基底層のメラノサイトは正常通り存在するからです。そしてメラノソームの大きさ、形や内部構造に著変はありません。しかしながらメラノソームは未熟なものが多く、メラノソームの数は減少しています。(一部の報告ではメラノサイトの数も減少しているとされます。)
メラノソームの合成の低下とケラチノサイトへのメラニンの受け渡しの障害がその病態と考えられています。

生下時には見られないこともあり、数年後に出現することもありますが、新生児の皮膚は比較的に白く、1年後徐々にメラニン色素量が増えてくるために目立ってくるためと考えられています。

特別な治療方法はありませんが、カモフラ―ジュ療法、植皮術、あるいはナローバンドなどの紫外線療法が行われることもあります。

参考文献

シミと白斑 最新診療ガイド 皮膚科臨床アセット 11
総編集◎古江増隆 専門編集◎市橋正光 中山書店 東京 2011

母斑と母斑症 皮膚科臨床アセット 15
総編集◎古江増隆 専門編集◎金田眞理 中山書店 東京 2013